ワクチンの未来についてはいいニュースと悪いニュースがある:SZ Newsletter VOL.96[VACCINE]

ブレークスルー感染を引き起こすデルタ株の蔓延は、ワクチン接種の「順番待ち」世代に深刻な影響を及ぼしている。それでもmRNAワクチンは、従来の時間軸を打ち破るスピードで開発された。結局のところ、もしCOVID-19が10年前に起こっていたら、もっと多くの家族や友人を失っていたかもしれないのだ。今週のSZメンバーシップのテーマ「ワクチン」について、その未来を左右する革命と、人々の「信頼」の行方を考察する編集長からのニュースレター。

「ワクチン・アパルトヘイト」を放置すると、世界は終わりのないパンデミックに陥る

世界中で接種されたワクチンのほとんどは高・中所得国で打たれ、最貧国では23年までワクチン接種が進まないという予想もある。世界が協調して「ワクチン・ナショナリズム」を排し、「ワクチン・アパルトヘイト」とも言われるこの格差を是正しなければ、貧しい地域は急激な感染拡大に脆弱なままで、ウイルスに変異の機会を与え続けることになる。最悪の場合、ウイルスを撲滅できる絶好の機会を逃し、世界は慢性的で終わりのないパンデミックに陥ることになるのだ。

次のパンデミックはワクチンの不足ではなく信頼の欠如によって起こる:ワクチン人類学者ハイディ・ラーソンの挑戦

COVID-19のさらなる変異株の発生を防ぐには、世界規模での封じ込め、特に発展途上国でのワクチン接種を進めることが重要だ。だがいまやワクチンを最も嫌悪しているのは、世界で最も裕福な国々だ。ワクチン人類学者ハイディ・ラーソンの調査では、政府への信頼が予防接種率を予測するもっとも強力な指標になるという。果たして人類は、次の感染爆発が起こる前にワクチンを信頼できるようになるのだろうか?

mRNAワクチン革命はまだ始まったばかりだ(後篇):免疫エンジニアリングの時代へ

新型コロナウイルスはある意味で、mRNAの未来に向けたインフラを構築した。いまや150を超えるmRNAワクチンが開発段階にあり、ワクチン学の新時代が築かれようとしているのだ。近い将来にはデスクトップ・サイズのワクチン生産マシンが開発され、HIVやデング熱、肝炎や嚢胞性線維症といった難治性の疾病からテロメアまでをも対象として多くの臨床試験が始まることになる。mRNAワクチン革命の最前線を追ったロングリードの後篇。

mRNAワクチン革命はまだ始まったばかりだ(前篇):インフルエンザへの応用

従来のワクチン開発の時間軸を打ち砕き、新型コロナウイルスに対して記録的なスピードでワクチン開発を可能にしたmRNA。このテクノロジーは飛躍的に速く、わずかなコストでワクチンの実現を約束する。その応用範囲はインフルエンザやマラリア、HIVなど幅広く、次世代mRNAワクチンの開発競争がすでに勃発しているのだ。世界を変えたmRNAワクチンはさらなるゲームチェンジャーとなるだろうか?