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<史上2番目に若くして学士号を取得したけれど、資格よりも本物の知識を得ることのほうがずっと重要だ> 幼い頃の記憶はあまりないけど、いとこのディランとよく遊んだことは覚えている。両親はオランダで3つの歯科医院を経営していて忙しかったから、9歳まではベルギーの祖父母の下で暮らしていた。 祖母はいつも両親に、僕が年齢のわりにとても賢いと言っていた。でも、両親は本気にしなかった。誰だって実の孫は特別だと思うから。 4歳でベルギーのオーステンデにある小学校に入学し、6歳で卒業した。当時受けたIQテストでは、測定可能な最も高いスコアが出たという。 高校の最初の1カ月は他の生徒と一緒に授業を受けたが、僕もクラスメイトもイライラした。みんなは僕がどんな問題にもすぐ答えるのが気に入らず、僕はそんなみんなが気に入らなかった。学校が個人授業をしてくれるようになってからは、いろんなことがうまく運び、8歳で卒業した。 大好きな物理や数学、化学の授業を受けられるから高校は好きだったが、それでも大学に行けると分かったときはホッとした。自分で選んだ教科を集中的に学べるからだ。 最初に入ったオランダの大学は2019年に中退して、翌年4月からアントワープ大学で物理学を学び始めた。コロナ禍のため大学に行くのは試験や実験のときだけだったから、他の学生と交流することはあまりなかった。 勉強を進めるうちに、特に量子物理学に興味を持つようになり、他の課程を全て中断して物理学に集中することにした。今年6月に物理学の学士号を取得し、11歳で「優等」の成績で大学を卒業した。 不死の研究で重要なのが物理学 自分が史上2番目に若くして学士号を取得したらしいことは知っているけれど、僕にとって資格を取ることは大した話ではない。本物の知識を得ることのほうが、はるかに重要だ。学士号を取得したのは、修士課程を始めるのに必要だったからだ。 僕が物理学を選んだのは、最終的な目標が不老不死を実現することだからだ。不死の研究において重要な分野の1つが物理学なのだが、ゴールへの道筋はまだ見えていない。 不老不死に関心を持ったきっかけは、祖父母が心臓病を患っていたことだ。そういう人たちを助けたいし、他の子供たちが祖父母を失わずに済むようにしたい。 ===== 不死の実現に至る道のりは、とても大きなパズルのようなものだ。パズルには、たくさんのピースがある。それがさまざまな研究だ。そこから得られた知識を組み合わせることで、新たな洞察やアイデアが生まれる可能性がある。僕が興味を持っているのは人工臓器で、いずれは可能な限り多くの体のパーツを人工臓器に替えられるようにしたい。 両親は僕のことを、とても誇りに思っているという。彼らは僕のやっていることが、すごいと思っている。でも僕はただ、自然な流れに身を任せてきただけで、こんなことになるとは思っていなかった。 これからもアントワープを拠点にしていこうと思うけれど、イスラエルやイギリス、アメリカなど他の大学とも共同研究を行う計画を立てている。既に数多くのプロジェクトに着手しているが、今の段階では誰と一緒にやっているかは内緒だ。 将来はアントワープ大学で博士号を取得すると思う。その後は自分の研究所を持って、思う存分、研究に打ち込みたいと思っている。