亜鉛はウイルスに効くようです。
オーストラリアのウェスタンシドニー大学で行われた研究によれば、亜鉛を摂取するとウイルスによる呼吸器感染症の予防と治療の両方に効果がある、とのこと。
日本では、亜鉛といえば男性の性力増強に関連していると考える風潮が強いですが、どうやらウイルス感染に対しても大きな効果があるようです。
しかし、なぜ金属に過ぎない亜鉛を摂取するだけで、ウイルス感染の予防と治療ができるのでしょうか?
研究内容の詳細は『BMJ Open』で公開されています。
目次
- 亜鉛がウイルス感染の予防と治療の両方に効果があると判明!
- 早めの亜鉛が風邪に効く
亜鉛がウイルス感染の予防と治療の両方に効果があると判明!
亜鉛は人間の生命活動に必須な微量元素の1つです。
体内に含まれる亜鉛は微量でありながら、免疫や炎症、傷の修復、血圧や低酸素にかかわる体の反応に大きな役割を果たしています。
また男性においては、亜鉛は健康な精子を維持するために有効です。
精子に含まれる亜鉛の濃度は血中の85倍~90倍となっており、精子はこの高濃度の亜鉛によって細菌感染から守られ、同時に遺伝子のエラーを防いでいるのです。
そこで今回、ウェスタンシドニー大学の研究者たちは、亜鉛の持つ感染防護能力を総合的に評価することにしました。
研究者たちはまず、28件の臨床試験に参加した5446人のデータを分析。
ウイルス性呼吸器感染症に対する亜鉛の効果を総合的に調査しました。
結果、亜鉛をウイルス感染の予防策として摂取していた場合、軽症になるリスクが28%低く、中程度の症状になるリスクを87%低くすることが判明します。
また感染後に治療薬として亜鉛を服用した場合にも効果があり、平均して症状の回復が2日速くなりました。
さらに治療薬としての亜鉛は即効性がないものの、亜鉛を3日間服用した患者はプラセボと比較して、症状が有意に軽減されていることも示されます。
なお、研究に用いられた亜鉛は、錠剤やゲル、点鼻薬(鼻スプレー)の形で摂取されました。
亜鉛を摂取したことによる主な副作用は、吐き気や口・鼻の炎症が中心となったものの、命にかかわるような深刻な副作用は報告されていないとのこと。
これらの結果は、亜鉛がウイルス感染症に対して、予防薬と治療薬の2つの効果を同時に持っていることを示唆します。
世界にはさまざまな薬が存在しますが、予防薬と治療薬の効果を併せ持つケースは非常に珍しいと言えます。
早めの亜鉛が風邪に効く
今回の研究により、亜鉛がウイルス性呼吸器感染症(正確には気道感染症)に対して予防と治療の両方に有用である可能性が示されました。
研究者たちは、ウイルス性呼吸器感染症に対して市販薬の効果が限られている一方で、亜鉛は天然の治療薬として幅広く(非特異的に)機能するだろう、と述べています。
いくつかの小規模な研究で亜鉛が新型コロナウイルスに対しても治療効果があるとする報告がなされていますが、研究者たちは、最終的な結論を出すにはより多くの検討が必要だとも述べています。
また今回の研究は亜鉛の効果を評価するにとどまっており、亜鉛がウイルスに効くメカニズムまでは調べられいません。
免疫や炎症などにかかわる亜鉛が細胞になんらかの働きかけを行っているか、あるいは亜鉛そのものにウイルス感染と戦う力があるのか。詳細は今後の研究に期待するしかないでしょう。
しかし現状、雑多な(非特異的な)呼吸器系のウイルスたちに対して、手軽に予防と治療の両立を行えるのが亜鉛しかないのも事実。
これから空気が乾燥する風邪の季節となるため、予防と治療用に亜鉛を用意しておくのもいいかもしれません。
参考文献
Zinc Supplements May Help To Stave Off Respiratory Infections Such As Colds, Flu, and COVID-19
Zinc Supplements May Help To Stave Off Respiratory Infections Such As Colds, Flu, and COVID-19
New Study Reveals Zinc Really Might Help Treat a Cold, But There’s a Catch
https://www.sciencealert.com/zinc-is-back-in-the-light-as-a-potential-for-treating-respiratory-infections
元論文
Zinc for the prevention or treatment of acute viral respiratory tract infections in adults: a rapid systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials
https://bmjopen.bmj.com/content/11/11/e047474