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<まだ感染全体に占める比率は少ないが、現在99%を占めるデルタ株も最初はそうだった> 新型コロナウイルスの変異株の一種で、ワクチンの効果が減少する可能性があるとされているミュー株が全米に広がっている。感染事例がまだないのはネブラスカ州だけだ。 1月に南米コロンビアで新たな変異株として特定されて以来、ミュー株は、アメリカを含む41の国々に拡散した。感染確認件数のうちミュー株が占める割合はまだ1%未満だが、感染力が高く、ワクチンや自然免疫の効果を減少させる可能性もあることから、保健当局はこの変異株の動向を注視している。 新型コロナウイルス変異株に関するオープンソースデータを提供しているウェブサイト「Outbreak.info」の情報によると、ネブラスカ州を除くアメリカのすべての州およびコロンビア特別区で、少なくとも1件のミュー株感染事例が検出されているう。 ミュー株が最も多く報告されているのはカリフォルニア州の384件だが、同州でゲノム解析を行った検体全体の0.2%を占めるにすぎない。9月3日の時点で、ロサンゼルス郡では167件でのミュー株が検出されたと、同郡の保健局が発表している。これらのミュー株は、7月19日から8月21日の間に解析を行った検体から見つかったもので、その中でも7月中に発見されたものが大半を占めている。 ロサンゼルス郡保険局のバーバラ・フェレラー局長は声明で、「ミュー株のような変異株が特定され、さらにこれらの変異株が世界的に拡散しているということは、自分自身と周りの人々を守るための対策を今後も継続する必要があるということだ」と述べた。「ワクチン接種と、何重もの感染防止措置が重要だ。感染経路を断ち切り、ウイルスの拡散を押しとどめる必要がある。万一拡散すれば、ウイルスがさらに危険な株へと変異しかねない」 アラスカでは全体の4% ミュー株の検出がカリフォルニア州に次いで多かったのは、メイン州、コネチカット州、フロリダ州だ。フロリダ州での検出は全米で2番目に多く、解析を行った6万475件の検体のうち、384件がミュー株であると特定された。 検出数は多いが全体に占める割合としては低いカリフォルニア州やフロリダ州とは対照的なのが、アラスカ州だ。アラスカ州での検出数は146例にとどまるが、同州で解析が行われた検体の中で占める割合は4%と、他の州と比べてかなり高い割合になっている。 世界保健機関(WHO)は8月30日、ミュー株を新たに「注目すべき変異株」に指定した。その特性から、感染力がさらに高まり、ワクチンへの耐性が強くなるおそれがあるとしてのことだ。しかし、米疾病対策センター(CDC)は今のところ、同様の指定を行っていない。 米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は9月2日、ミュー株に関して、当局は「注視」していると述べた。ミュー株はすでにアメリカ国内で確認されているものの、同国内で圧倒的多数を占める状態にあるかというと、それには「ほど遠い」とファウチは述べた。現在、圧倒的多数の99%を占めるのはデルタ株だ。 ===== 「この国でまだ、いかなる意味においてもミュー株が根付いたとは言えない状態にあるとはいえ、我々は常にすべての変異株に対して目を光らせている」とファウチは述べた。さらに、実験データでは、ミュー株がモノクローナル抗体やワクチンへの耐性を示す可能性が示唆されていることを認めた。それでも現時点では「差し迫った脅威とは考えていない」と、ファウチは続けた。 仮にミュー株が、臨床環境でワクチンの有効性を減少させることが確かめられたとしても、ワクチン接種は感染・入院・死亡の件数を減少させる効果を発揮する、とファウチは述べた。 アメリカにおけるミュー株の感染件数の7日間平均は、7月なかばにピークに達し、その後は減少傾向にある(Outbreak.info調べ)。減少している理由については、解析に回される検体の数が減っている、ミュー株自体の勢力が弱まっている、アメリカではまだ根を下ろしていない、といった複数の説が考えられる。 (翻訳:ガリレオ)