私たちの属する天の川銀河は、宇宙の中でも比較的大きい銀河の1つです。
そのような大きな銀河は、他の銀河との衝突・合併を繰り返すことで形成されていったと考えられています。
ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の新しい研究は、約130億年前に天の川銀河と衝突したとされる「ガイア・ソーセージ・エンケラドゥス(Gaia-Sausage-Enceladus)」が、どのように天の川銀河に取り込まれていったかを調査。
それにより、過去100億年にわたる天の川銀河のほぼ全体の成長を説明できるモデルに近づいたと報告しています。
研究の詳細は、2021年12月14日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載されています。
目次
- 天の川銀河に取り込まれた最後の銀河
天の川銀河に取り込まれた最後の銀河
私たちの属する天の川銀河も、始めから現在のような姿だったわけではありません。
銀河は複数の銀河同士が長い時間を掛けてぶつかり合い、合併して巨大な銀河を形成していきました。
では、私たちの天の川銀河はどのような歴史を歩んで、現在の姿になったのでしょうか?
今回ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのチームは、この詳細を明らかにするべく研究を行いました。
2013年に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げたガイア望遠鏡は、天の川銀河全体の1%に及ぶ約1000億個の星を調査し、正確な天の川銀河の3次元地図を作成しています。
本研究では、このデータと、スミソニアン協会が持つアリゾナ州のMMT望遠鏡による銀河の外域の観測を組み合わせて、約100億年前に天の川銀河と衝突し、合併されたガイア・ソーセージ・エンケラドゥス(GSE)の詳細を明らかにしました。
観測では、天の川銀河内のそれぞれの星の動きから、この合併した銀河の姿を捉えており、GSEは最後に天の川銀河と合併した矮小銀河だとわかっています。
これはソーセージのように棒状に星が集まっていたため、このように呼ばれています。
これまでの研究では、このGSEがどのように天の川銀河に取り込まれたのか(正面から衝突したのか、もしくは周回しながら徐々に合流したのか)は不明でした。
研究チームは、今回のデータによる一連の星の年齢や組成との比較を組み合わせた数値シミュレーションから、その状況をモデル化。
その結果、GSEは5億個の星を含み、天の川銀河の回転とは逆方向にぶつかって取り込まれたことが明らかになりました。
これにより、天の川銀河は現在の銀河ハローの50%と暗黒物質ハローの約20%をGSEから取り込んだという。
銀河ハローとは、銀河を丸く取り巻く領域のことで、ここには多くの星と共に星の成分が分布しています。
暗黒物質ハローとは、そのさらに外側を取り巻く領域のことで詳しくはわかっていませんが、ハローのガスをはるかに上回る質量が存在しています。
分析ではこれが最後の天の川銀河と他銀河の衝突であったと考えられ、今回の研究が完了すれば、過去100億年にわたる天の川銀河全体の成長を説明することが可能になるといいます。
もちろん最後といっても、今後天の川銀河が他銀河と衝突しないということではありません。
現在も天の川銀河には、もっとも近い銀河であるマゼラン銀河(大マゼラン雲と小マゼラン雲)が、天の川銀河に向かって落下しています。
マゼラン銀河には大小2つありますが、それぞれ天の川銀河の約1%と0.7%の質量の恒星を含んでいます。
これが天の川銀河へ落下したとき、私たちの銀河は新たな合併により成長することになるのです。
私たち人類がその瞬間を目にすることはないでしょうが、宇宙のダイナミックな動きには驚嘆させられます。
参考文献
Our Milky Way Galaxy’s Most Recent Major Collision
https://scitechdaily.com/our-milky-way-galaxys-most-recent-major-collision/
元論文
Reconstructing the Last Major Merger of the Milky Way with the H3 Survey
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac2d2d