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<世界に先駆けて公立学校でLBGT問題の授業を義務化したスコットランドが、学校におけるトランスジェンダー学生の対応について革新的な指針を発表した> スコットランドでは4歳の子供でも、親の同意なく学校における呼び名と性別を変更できることになったと、イギリスのテレグラフ紙が報じた。 スコットランド自治政府は新たなLGBTQ+(同性愛など全ての性的少数者)インクルーシブ教育のためのガイドラインを策定し、それを70ページに及ぶ文書にまとめて8月12日に発表した。このガイドラインによれば、教師は性別を変えたいという意思を示した生徒に疑問を呈してはならず、生徒に新しい名前とどのような代名詞を使ってほしいかを尋ねることが求められる。 このガイドラインに沿う形で、政府は学校に対してトランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)の学生がトイレとロッカールームに関して、男性用、女性用どちらでも好きな方を使用できるようにすることを要請してきた。性別にとらわれないジェンダーニュートラルな制服の選定や、トランスジェンダーのキャラクターを含めた授業や教材の開発も進んでいる。 ジョン・スウィニー副首相兼教育相は7月、スコットランドはすでにヨーロッパで最も進歩的な国の一つと考えられているという声明を出した。 「私たちは、学校のカリキュラムにLGBTI*インクルーシブ教育を組み込む世界で最初の国になることを発表できることを嬉しく思う」と、スウィニーは述べた(*LGBTIのIはインターセックス、男女どちらでもあったり、どちらでもない状態のこと)。 親には知らせなくてもいい 今回のガイドラインには、「カミングアウト」の年齢に関する要件はない。たとえ親に言えない場合でも、子どもの意見や要求は尊重されるべきとしている。 「トランスジェンダーの若者は、自分の性同一性障害について家族に打ち明けていないかもしれない。だが不注意に事実を公表することは、若者に余計なストレスを与えたり、危険にさらしたり、法律に違反する可能性もある。従って、若者の意見や権利を考慮、尊重することなく、親や保護者と情報を共有するべきではない」とガイドラインは述べている。 人権擁護団体は、この新しい政策が学生の「健全な成長」を助けるだろうと述べ、ガイドラインへの支持を表明する。 イギリスのLGBTQ+の権利保護団体ストーンウォールを率いるコリン・マクファーレンは本誌にこう語った。「トランスジェンダーの学生は安全かつその存在を受け入れてくれる環境で教育を受ける権利がある。だからスコットランド政府の学校におけるトランスジェンダーの若者支援に関する最新のアドバイスは非常に重要だ。スコットランド全土の教師や学校にとって、このガイドラインが教室の内外を問わず、すべての若者の健やかな成長をより良く支える力になることを願っている」 ===== だがこうした変化を、学校が学生に押し付ける「危険なイデオロギー」とみる人々もいる。 「この状況が心配でならない」と言うのは、フェニミスト団体フォー・ウイメン・スコットランドのマリオン・カルダー。「スコットランド政府が推し進めているのは危険なイデオロギーだ」 「これまでは、服装や好き嫌いなどを通じて、子供たちはジェンダーロール(男女の性別による役割分担)を演じ、試すべきだと一般的に理解されていた」と、彼女は言う。「それなのに今は、子供たちが健全とはいえない方向に進まされようとしている。それは生涯にわたる影響を与えかねない」 だがスコットランドのシャーリー・アン・ソマービル教育長官は、この文書はジェンダーの移行を「促進」しようとしているのではなく、みずからのジェンダー変更を選んだ子どもがそれを実践するうえで適切な環境と安全を提供するだけだと断言した。 「トランスジェンダーの若者は学校で多くの問題に直面する可能性があり、教師と職員は学生の精神、肉体、感情の健康をサポートする自信とスキルを持たなければならない」と、ソマービルは言う。 「このガイドラインでは、すべての学生の権利が完全に尊重される環境を確保しつつ、学校がトランスジェンダーの若者を支援する方法を概説している。学校に対し、実用的な提案を提供しているのだ」