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<バイデンが「ありえない」と言った「サイゴン陥落」がカブールでも起こった。バイデンは厳しい問いに直面することになる> アフガニスタンの反政府勢力タリバンが15日、首都カブールの主要施設を制圧する一方で、アメリカはカブールにある大使館の屋上からヘリコプターで職員を退避させる事態に追い込まれた。 ソーシャルメディアでは、ジョー・バイデン米大統領が先月の記者会見で「起こりえない」と言っていた状況がまさに現実のものになったと話題になっている。 1975年に南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)が陥落してベトナム戦争が終結した際には、アメリカ大使館の屋上から人々がヘリコプターで救出される写真が多くのメディアで報道された。 バイデンは7月8日、アフガニスタンからの米軍の全面撤退について記者会見した際、アメリカ国民があの時のような映像を見ることはないと断言していたのだ。 「タリバンは北ベトナム軍ではない。(両者は)能力という意味で比べものにならない。人々がアフガニスタンのアメリカ大使館の屋上からヘリコプターで運び出されるのを目にする状況にはならないだろう。まったく比較にならない」とバイデンは述べた。 Perfectly Aged Biden in July: “The Taliban is not the North Vietnamese army. They’re not remotely comparable in terms of capability. “There's going to be no circumstances where you’re going to see people being lifted off the roof of a US Embassy in Afghanistan.” pic.twitter.com/Dw7ghFs8Vz— IndSamachar News (@Indsamachar) August 15, 2021 だが15日、インターネットやメディアではカブールのアメリカ大使館の屋根から職員を退避させるヘリコプターの映像が流れ始めた。ロイター通信やワシントン・ポストを初めとする報道機関は、タリバンがカブール中心部に迫る中、アメリカがヘリコプターを使って職員を緊急避難させていると伝えた。 ■カブールvsサイゴン PHOTO 1: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the #Taliban enter #Kabul from all sides. #Afghanistan (2021)PHOTO 2: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the PAVN & Viet Cong capture of Saigon, Vietnam (1975) pic.twitter.com/YamWmzjOay— Stefan Simanowitz (@StefSimanowitz) August 15, 2021 「米史上最長の戦争」のあっけない幕切れ ツイッターでは、7月の記者会見でバイデンが「そんな状況は起こりえない」と語る動画が拡散された。このバイデンの発言を引用しつつ、1975年のサイゴンと今回のカブール、それぞれの大使館からヘリコプターで職員らが退避する写真を並べた投稿も多くの人にシェアされた。 もともと駐留米軍の完全撤退は、トランプ前政権がタリバンとの間で締結した和平合意に盛り込まれたものだった。にも関わらず、共和党の下院議員らは撤退をめぐってバイデンを強く批判している。ツイッターでも議員らは「これはたった38日前の発言」というキャプションを付けて、バイデンの7月の記者会見の動画をシェアした。 また、バイデンは7月8日の記者会見で、タリバンによる政権奪還は「不可避」なのではとの懸念を一蹴した。アメリカが支援してきたアフガニスタン政府の瓦解は近いとする見方についても否定的で、「私はアフガニスタン軍の能力を信頼している。訓練も装備も、戦争の遂行という意味での能力も向上している」とバイデンは述べた。 アフガニスタンへの派兵はアメリカにとって「史上最も長い戦争」となっていた。米軍は9・11同時多発テロを受け、2001年に同国に侵攻。それからもうすぐ20年になる。 ===== ドナルド・トランプ前大統領はアフガニスタン駐留を続けることは「ばかげており」、アメリカの国益にとってためにならないとつねづね述べていた。そしてマイク・ポンペオ国務長官(当時)の主導の下、トランプ政権はタリバンと交渉を行い、昨年2月に和平合意にこぎ着けた。合意には米軍は今年5月1日までにアフガニスタンから全面撤退することが盛り込まれた。 1月に大統領に就任したバイデンは、この合意に従うことを選択したが、撤退期限は8月末に変更されたが、その前にアフガニスタン政府は瓦解してしまった。 先週、タリバンが急速に支配地域を拡大する中でも、バイデンは米軍の全面撤退は正しいとする姿勢を変えなかった。9.11を計画・実行した国際テロ組織アルカイダの制圧はとっくの昔に果たされた、というわけだ。 「私は決断を後悔していない」とバイデンは述べた。「アフガニスタンの指導者らは力を合わせなければならない。われわれは数多くのアメリカ兵を死や負傷で失った。アフガニスタン政府軍の兵士たちも自分のために、自分たちの国のために戦わなければならない」 アメリカは「破綻国家を建設していた」 アメリカの情報関係者や軍事専門家からは、1カ月以内、長くても3カ月のうちにタリバンがカブールを制圧する可能性があるとの声が上がっていた。だがバイデン政権は、タリバンがこれほど急速に支配地域を拡大するとは思っていなかったようだ。米軍撤退に関してバイデン政権を批判する人は多いが、この決断を擁護する人もまた多い。 米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の政策ディレクター、ベンジャミン・フリードマンは本誌の取材に電子メールでこう答えた。「(現在の状況は)どんなタイミングであれ米軍の撤退に合わせて起こりうる事態だった。それが10年前であっても10年後であってもだ」 また、フリードマンはこうも述べた。「今回の(政権)崩壊のスピードに驚く人は多い。だが、事態の進展に関して当局がどうごまかそうと、われわれは破綻国家を立ち直らせていたのではなく、破綻国家を建設していたのだという事実を隠しおおすことはできないだろう。米軍が撤退する一方で、アフガニスタン軍はほとんどの地域で相手方についたり、単に戦列を離れたりして、まともに(タリバンと)戦わなかった」 ===== ■カブール陥落vsサイゴン陥落 PHOTO 1: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the #Taliban enter #Kabul from all sides. #Afghanistan (2021)PHOTO 2: US diplomat evacuate US from embassy via