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ライデンフロスト効果で、異なる種類の液滴が弾きあう現象が確認された
Credit:F. Pacheco-Vázquez et al.,PhysRevLett(2021)

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水の沸点を大きく超えたホットプレートに雫を落とすと、雫はすぐに蒸発せずにわずかに宙に浮いたまま維持されることがあります。

これをライデンフロスト効果と呼びます。

メキシコのプエブラ大学(University of Puebla)の研究チームは、この効果が発生しているときに、異なる種類の液滴がぶつかると、合体せずに連続して跳ね返ることを発見

チームはこれを「トリプルライデンフロスト効果(Triple Leidenfrost Effect)」と名付け、どういった条件でそれが起きるかについて、分析して報告を行っています。

研究の詳細は、11月12日付で、科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に掲載されています。

目次

  • 高温の表面で液体が蒸発せずに宙に浮く「ライデンフロスト効果」
  • 液滴同士の間でも起きるライデンフロスト効果

高温の表面で液体が蒸発せずに宙に浮く「ライデンフロスト効果」

200℃に熱した鉄板に水滴を落とす実験
Credit:Liquid Nitrogen and the Leidenfrost Effect(2018),The Royal Institution

家でフライパンを使ったときに、表面に水滴が落ちるとじわじわとあぶくを出してすぐに蒸発してしまします。

しかし、このとき鉄板などの表面が、水の沸点よりもはるかに高い200℃以上に加熱されていたとき、落ちた水滴はすぐに蒸発せずに、雫の形を維持したまま滑るように移動します

これは鉄板が非常に熱いために、水滴の底面がすぐに蒸発し、水蒸気の膜を作って水滴を浮かせてしまうためにおきる現象です。

蒸発が早すぎて水滴がホバークラフトのような状態になっているのです。

この状態をライデンフロスト効果と呼びます。

これはすでに知られていた現象ですが、メキシコのプエブラ大学の研究チームは、このとき起きるさらに興味深い現象を発見しました。

チームはわずかに凸状の金属板を250℃まで熱し、そこに水、エタノール、メタノール、クロロホルム、ホルムアミドなど異なる種類の液滴を落としたとき、液滴同士がすぐに合体せず、弾きあうのを確認したのです。

エタノール(小さな液滴)と水(大きな液滴)が跳ね返る様子
Credit:F.Pacheco-Vázquezetal ,Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect(2021)

これは水(大きな液滴)とエタノール(小さな液滴)がライデンフロスト効果を起こしているときの動画です。

エタノールはわかりやすくするために青く着色されています。

液体同士が触れあえば、通常はすぐに合体して混ざり合うと考えられますが、この動画では液滴はなんども跳ね返っています。

そして、エタノールが蒸発してある程度小さくなったところで、2つの液滴は混ざり合っています。

これがチームの発見した新しいライデンフロスト効果です。

この現象は、水と水とか、エタノールとエタノールのような同種の液体同士では発生せず、異なる液体同士のときに数秒から数分間跳ね返るのが確認されました

では一体、なぜこんな事が起きるのでしょうか?

液滴同士の間でも起きるライデンフロスト効果

研究チームは今回発見された現象の原因は、加熱された金属板表面だけでなく、液体同士の表面でもライデンフロスト効果が起きているためだと説明しています。

今回実験で弾きあった液体は、どれも互いに沸点の温度が大きく異なる液体同士でした。

液体の沸点は、高度によって変わってきますが、実験が行われた研究室では、アセトンの沸点は50℃でホルムアミドの沸点は146℃です。

このように沸点が異る液体の場合、片方の液体にとって、ぶつかる液体の温度はライデンフロスト効果を起こすの十分なほど熱い状態になります。

そのため、金属板の表面だけでなく、液体同士の表面でもライデンフロスト効果が起こります。

これによって、異なる種類の液体は合体することなく、発生した蒸気の膜によって弾かれていたのです。

エチレングリコール(透明)とクロロホルム(青)を使った実験。2つの沸点は非常に異なるため、液滴が衝突すると、液滴間の蒸気層が見える。
Credit:F.Pacheco-Vázquezetal ,Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect(2021)

この反跳現象は、片方の液滴が十分小さくなったところで終了します。

たとえば水とエタノールだと沸点の低いエタノールの方が早く蒸発していきます。(水の沸点は100℃で、エタノールの沸点は70℃)

そしてエタノール液滴が非常に小さくなり、水の吸引に耐えるだけの十分な蒸気を生成できなくなると、液滴間のライデンフロスト効果が維持できなくなり、融合することになるのです。

2つの液滴の沸点が十分に異なる場合、液滴同士の間でライデンフロスト効果が発生し弾かれる
Credit:F.Pacheco-Vázquezetal ,Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect(2021)

このため、エチレングリコール(沸点190℃)とクロロホルム(沸点54℃)のように、あまりに沸点が大きく違う液体同士だと、合体してもそのあとすぐ弾けてしまったりします。

沸点の大きく異るエチレングリコールとクロロホルムの合体
Credit:F.Pacheco-Vázquezetal ,Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect(2021)

研究の理論によれば、この現象が起きるとき金属板と液体それぞれの表面で、同時に3つのライデンフロスト層が存在するため、研究チームはこれを「トリプルライデンフロスト効果(Triple Leidenfrost Effect)」と名付けています。

こうした理由で、同種の液体だと、このトリプルライデンフロスト効果で弾きあう現象は確認されなかったのです。

単純ながら非常に興味深い物理現象です。

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参考文献

Amazing Video Reveals a New Kind of Leidenfrost Effect We’ve Never Seen Before
https://www.sciencealert.com/we-ve-just-discovered-a-new-kind-of-leidenfrost-effect
Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect
https://physics.aps.org/articles/v14/160

元論文

Triple Leidenfrost Effect: Preventing Coalescence of Drops on a Hot Plate
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.204501