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<新たな火口が出現。山頂の位置が移動し、標高も増していた> 今年2月から噴火活動が続くイタリアのエトナ火山が、噴火によって標高を伸ばしていたことがわかった。同じシチリア島内に本部を置くイタリア国立地球物理・火山学研究所(INVG)が衛星画像を分析したところ、2018年に観測されていた記録を31メートル上回り、3357メートルとなっていることが判明した。 エトナ火山は以前からヨーロッパの活火山として最高の標高を誇っていたが、6ヶ月間続く火山活動によってこの記録を自ら塗り替えたことになる。火口付近に噴出物が堆積したことで、火山の上に小さなもうひとつの火山を載せたような形状となっている。 同火山はこれまでにも、活発な活動によって早いペースで標高を変化させている。従来は山の北東部にある火口が最高峰となっており、1981年の測定では標高3350メートルを有していた。その後火口の一部が崩落したことで、2018年の測定では3326メートルにまで縮小している。 標高が高くなったエトナ山 image: Boris Behncke / facebook 今年2月に始まった今回の一連の火山活動では、これとは別に山の南東部に新たな噴出口が発生した。これまで40年間にわたり最高峰であった北東の火口に代わり、新たな山頂が誕生したことになる。 既知の噴火としては最古の歴史 エトナ山は50キロ四方ほどの広い裾野を持つ活火山であり、その山頂は季節よっては雪で覆われている。こう表現すると富士山のような姿が頭に浮かぶが、外観はなだらかな曲線ではなく、起伏の多いゴツゴツとした形状だ。 この形状は、長い歴史のなかで繰り返した噴火が生み出したものだ。科学ニュースを伝えるネイチャー・ワールド・ニュース誌は、エトナ火山の噴火の歴史は紀元前1500年にまでさかのぼり、現在知られている噴火としては地球上で最も古い歴史を持つと解説している。 その誕生はさらに古く、エトナ火山は今からおよそ30万年前に海底火山として形成された。溶岩流の噴出を重ねることで高さを増していき、長い時間をかけて海面を超え、現在の標高に至ったと考えられている。今でもその表面のほぼ全域を覆っているのは、30万年前に固まった古い溶岩流だ。 美しい火山だが、降灰・轟音被害が深刻に 現在では2月の噴火開始から半年が経つが、火山活動の勢いは衰えるところを知らない。5月を過ぎた頃から噴火はペースを早め、数日間隔にまで活発化している。火口から噴水のように立ち上がる溶岩と噴石は圧倒的な規模で、最大で推定1000メートルの高さに達することもある。溶岩の噴出は8月初めまでの合計で50回を超えた。 Today(Aug19)Spectacular eruption Mount Etna with ash 1km high into the sky, rained on Italian cities 周辺地域では降灰による被害が深刻化している。世界の火山活動情報を報じるボルケーノ・ディスカバリー誌は、風がほとんど吹いていないため、火山の東部および南部地域に非常に多くの灰と噴石が集中的に降っているとの情報を伝えている。 ===== 英ガーディアン紙はAFP通信を転電し、シチリア州自治体が7月までに30万トンにのぼる灰を処理したと報じている。エトナ火山から車で2時間ほどのところに住む女性は取材に対し、ときに灰がまるで雨のように降り注ぐ厄介な存在であり、火山から2時間離れた自宅でも噴火で窓が揺れることがあると訴えている。 危険性はほぼないというが…… 安全面のリスクについてシチリア州自治体は、火山周辺の村への危険性はほぼないと判断している。しかし、数週間から数日おきに突如として発生する噴火は、やはり住民の生活に大きな影響を及ぼしている。エトナ火山の活発な火口は、予告なく爆風と噴石を放出する。 建物や農作物、そして自動車などへの被害は深刻だ。今年5月に英BBCは、自動車の練習中であったという18歳住民の体験談を掲載している。麓の町を走っていたところ、「彼女がかつて聞いたこともないような音」を耳にして車を停めたという。直後、巨大な赤い雲が頭上に広がり、車の屋根とフロントガラスに噴石が降り注いだ。辺りはすぐに赤みを帯びた空気で覆われた。コロナ対策で偶然マスクを着けていなければ、息をするのも困難だっただろう、と女性は振り返る。 英メトロ紙も以前の報道において、その激しい噴火は夜空を濃いオレンジ色に染め上げたほどだと伝えている。 ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ火山について、ある年老いた住民はその美しさを誇りに思うと語っている。しかし同時に、標高を変えてしまうほどの力を秘めた自然の猛威は、シチリア島の住民たちを大きく戸惑わせることがあるようだ。 ===== Today(Aug19)Spectacular eruption Mount Etna with ash 1km high into the sky, rained on Italian cities Etna eruption 31 July – 1 Aug 2021 with tall lava fountains over 1000 m high!