初代王者が語った「不安」と「感謝」
東京オリンピックの新種目「スケートボード」の男子ストリートで初代王者になった堀米雄斗選手(22)が29日、東京・有明のメインプレスセンターで行われた会見に登壇した。海外メディアも多く参加する会見にゲストとして招かれた堀米選手が最初に口にしたのは、大会が開催されたことへの感謝だった。
堀米選手:
「今回、コロナの中ですごい厳しい状況の中でオリンピックがあった。皆さんがサポートしてくれたおかげで、すごく感謝しています。スケートボードが初めて新種目に決まって、地元・江東区でスケートボードができてすごく嬉しく思っています。スケートボードはまだそんなに知らなかった人も多いと思うけど、オリンピックの機会もあって、いろんな人たちにスケボーの楽しさやかっこよさを知ってもらえたのですごく嬉しいです」
新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多を更新する中、東京オリンピックの開催をめぐっては、今も開催自体に否定的な声は少なくない。堀米選手は競技に打ち込みながらこれまで抱えてきた心境も吐露した。
堀米選手:
「ここ2、3年コロナで厳しく開催もわからない状況で、今回東京で(大会が)あるのかなと不安だったし、出られるチャンスがあるのに出られないのかなと不安もあった」
「五輪前、日本国民はオリンピック反対しているというニュースを聞いて、緊張はしていたけど、今回本当にオリンピックを開催してくれて、こうやって自分が夢の舞台でスケートボードをすることができ、金メダルをとれた。日本の人たちも全員ではないと思うんですけど、感動を与えられたと思っています。すごいみんな喜んでくれているので、本当にオリンピックが開催されて良かったと思うし、ボランティアをしてくれている人やサポートしてくれている人たちに本当に感謝しています」
「賞金以上の夢のような舞台」
スケートボードには多額の賞金が出る世界的な大会も多い。一方、賞金は出ず、様々な制約も多いオリンピック。スケートボードの魅力についてよく「自由だから」と話す堀米選手は、初めて臨んだその舞台で何を感じたのか。
堀米選手:
「今までいろんな世界大会に出てきましたが、オリンピックは今までのコンテストと違って、何十億という人が見てくれています。特にスケートボードは初めての競技だったので、これからいろんな人たちが知っていくと思います。賞金以上にオリンピックというすごい夢のような舞台でスケボーをさせてもらえたことが、本当に今までで一番良い経験になったし、これからもっとスケートボードが良い方向に進むと思います」
アスリートが語る東京オリンピックへの思い
大会の開幕から1週間。戦いを終えた選手からは、これまで以上に大会の開催自体への思いが聞かれる。
柔道男子73キロ級で2連覇の偉業を達成した大野将平選手(29)。試合後に「日本中のファンに金メダルの報告を」と向けられ、返ってきたのはこんな言葉だった。
__大野選手:
「(東京五輪開催への)賛否両論があることは理解しています。ですが、われわれアスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば本当に光栄に思います」__
東京オリンピックの開催前、政治家たちはコロナ禍での大会開催の意義を問い、明確な答えがないままスポーツの祭典は始まった。大会開催を信じ続けてきた選手たち。戦いを終えたアスリートの言葉にその意義が込められているのかもしれない。
(経済部 オリンピック・パラリンピック担当キャップ 一之瀬 登)