これがタリバン暫定内閣に入閣した「FBI指名手配犯」の写真

<9月7日に発表された暫定内閣の陣容。国際社会がとりわけ不安視するのが、内相代行のシラジュディン・ハッカニだ。アメリカが1000万ドルの懸賞金を賭けている> 首都カブール制圧から3週間。抵抗勢力の最後の拠点だったパンジシール渓谷を掌握してアフガニスタン全土を支配下に置いたイスラム武装勢力タリバンが9月7日、暫定内閣の陣容を発表した。 閣僚は全員が男性で、大半がパシュトゥン人。 タリバンの指導層が数多く入閣しており、旧タリバン政権より穏健で民主的な顔触れになるとの期待は失望に変わった。 首相代行の座に…

所得格差と経済成長の関係──再配分政策が及ぼす経済的影響

<コロナで露呈し、拡大した貧富の格差を各国はどう是正するのか> *この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年8月27日付)からの転載です。 1――はじめに コロナ禍による格差拡大への懸念は、世界共通の課題として意識されつつある。世界に先駆けて景気回復が進んだ米国では、富裕層に対するキャピタルゲイン課税率を引き上げ、その徴収分を子育てや教育支援などに充てようという構想が議論されている。日本では、コロナ感染の抑止という緊急課題への対応を未だ余儀なくされているが、その課題に目途が立つ頃には、生活困…

河野太郎に好意的な中国──なぜなら「河野談話」否定せず

河野太郎氏は女系天皇や原発で「豹変」したと日本では報道されているが、中国では「河野談話」を否定しなかったことに注目し、非常に好意的だ。その実態と、日本に及ぼす影響に関して考察する。 日本の報道:脱原発と女系天皇容認を封印 自民党の河野太郎氏(行政・規制改革大臣)が9月10日、自民党総裁選への立候補を正式に表明した。 9年前から自身のブログで訴えてきた「脱原発」エネルギー政策については、持論を封印して、原発再稼働を当面容認する考えを示し、「安全が確認された原発を当面は再稼働していくことが現実的だ」と述…

後退するアメリカーー米中首脳電話会談で「一つの中国」を認め、ウイグル問題を避けたバイデン

9月9日、バイデンは習近平に電話を掛けて「衝突を避けたい」旨の意向を伝えたと日本では報道されているが、バイデンは本当は何と言ったのか、何を言わなかったのか。米中双方の公式報道から読み解く。 日本での報道 日本での報道は、たとえば9月10日の時事通信社の「衝突回避で双方に責任 中国主席と電話会談 米大統領」などが一般的で、【ワシントン、北京時事】という米中双方の情報から書かれているので読み解きやすい。 それによれば、ホワイトハウスは、米中間の競争を紛争に転じさせないための「両国の責任」について議論し、…

日本は世界で4番目に気候変動のリスクが高い国に 台風・豪雨影響…国連レポート

<台風や豪雨は国内の問題に留まらず、世界規模の異常気象を代表する例となっていた> 地球温暖化の影響が懸念されるようになって久しいが、今夏はその影響を象徴するかのような出来事が相次いだ。 気温49.5度を記録したカナダ西岸では数百件の制御不能な森林火災が発生し、海ではムール貝が生きたまま半煮えとなった。ニューヨークでは先日、大規模な水害に見舞われ、地下鉄の昇降口に降り注ぐ滝のような雨の動画が出回っている。ヨーロッパでもシチリア島で48度超が報告され、欧州の観測史上最高を記録したほか、各地で山火事が多発…

弾道ミサイルより防護服?北朝鮮「平和的」パレードの異変

<金正恩による演説も戦略兵器の登場もなしの「地味パレード」が映し出す厳しい国内事情> 韓国軍の関係者は、北朝鮮が9月9日未明に行った軍事パレードを注視していたと本誌に語った。金正恩が北朝鮮の最高指導者に就任してからまもなく10年。この間、北朝鮮と韓国は対立と緊張緩和を繰り返し、両国関係はいまだ不安定なままだ。 韓国国防省の報道官は「韓国軍は北朝鮮の軍事パレードを注意深く見守っている」と本誌に語った。「アメリカと協力の下、詳細な分析を行っているところだ」 在韓米軍も、このパレードに注目していた。在韓米軍の報道官であるリー・ピーターズ大佐は、本誌の取材に次のように語った。「北朝鮮が最近、軍事パレードを実施したことは認識している。我々としては、韓国をあらゆる脅威や敵対勢力から守るために、引き続き協力して防衛態勢を取っていく」 北朝鮮はこれまで幾度も軍事力を誇示してきたが、建国73周年を記念して9日未明に実施されたパレードは、異色と言えるものだった。最新型のミサイルや戦闘能力を誇示してきた過去の軍事パレードに比べて、かなり控えめな内容だったのだ。 軍用犬や防疫隊が行進 パレードは金正恩がバルコニーから見下ろす平壌の金日成広場で行われ、馬に乗った騎兵部隊、軍の捜索犬を伴った兵士たちや、新型コロナ対策様のオレンジ色の防を身につけた防疫隊などが隊列を組んで行進した。 ロケットをけん引していたのは、これまでのような軍用トラックではなく、北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信によれば、「非常事態に侵略者やその配下にある部隊を圧倒的な火力で砲撃するための兵器を積んだトラクター」だった。 複数の報道によれば、金正恩は演説しなかったが、「歓声をあげる熱狂的な市民に温かく応じていた」ということだ。 朝鮮中央通信は、最高指導者である金正恩を熱烈に称賛。「唯一無二の英雄であり、我が国が繁栄する新時代を体現し、その熱烈な愛情と自己犠牲の精神で国と国民に向き合い、国家第一主義の金正恩朝鮮労働党委員長に対して、パレードに参加した全員が、最大限の賛美と深い感謝の念を示した」と報じた。 金正恩体制がまもなく10年を迎える一方で、韓国の文在寅大統領は2022年5月に任期満了を迎える。そしてアメリカでは、ジョー・バイデン大統領が就任1年目にして、既に国内で複数の厄介な問題に、そして国外ではさらに差し迫った外交上の問題に直面しており、こうした状況を鑑みると、朝鮮半島は今後もしばらく不安定な状況が続きそうだ。 ===== 文在寅はこれまで、歴史的な数の南北朝鮮首脳会談を取り仕切ってきた。その全てが、バイデンの前任者であるドナルド・トランプが現職の米大統領として初めて、北朝鮮の指導者と会談を行ったのと同じ、2018年に行われたものだ。しかし翌2019年2月の米朝首脳会談で、(アメリカによる北朝鮮の)体制保障と引き換えの非核化や対北朝鮮制裁の緩和についての合意がまとまらなかったことで、交渉の機運は失われた。 そして過去2年の間に、再び緊張が高まってきている。金正恩は核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験をまだ再開してはいないが、自分にはそれを行う自由があると宣言している。 それでも、北朝鮮も韓国も公式には、和解と再統一を模索している。7月には北朝鮮と韓国の軍当局が通信回線を復旧させることで合意し、関係改善の兆しが示された。だが8月には北朝鮮の当局者たちが、韓国によるアメリカとの合同軍事演習実施の決断を激しく非難し、再び緊張が高まった。 バイデン政権は北朝鮮との外交交渉を模索していく意欲を示しているが、アメリカはいかなる挑発行為にも相応の対処をすると警告もしている。9日の軍事パレードは、バイデンが1月に大統領に就任して以降、初めての挑発行為の類となる。平壌ではバイデンの就任直前にも、第8回朝鮮労働党大会を記念する壮大なパレードが行われた。 危機感が伺える党書記の演説 その後、金正恩は公の場で行った複数の発言の中で、北朝鮮が危機に見舞われていることを認め、「苦難の行軍」という言葉まで使った。この言葉は、正恩の父親である金正日が最高指導者だった1990年代半ば、朝鮮労働党が国民に、当時の飢饉と経済的苦境を乗り越えようと呼びかけた際のスローガンとして知られている。 また北朝鮮は、いまだ新型コロナウイルスの感染例を1例も報告していない世界で5つしかない国の1つだが、今も厳しいロックダウンと隔離措置を取っている。2021年はじめに隣国である中国で新型コロナの感染が拡大した際、国境を閉鎖した最初の数カ国のうちの1つでもあった。ワクチンの提供をはじめ、海外からの支援の申し出も一切受け入れていない。 9日の軍事パレードで演説を行ったのは、李日煥党書記だった。李は演説の中で、「国と国民が一心団結の威力で現在の難局を乗り切り、社会主義建設の新たな高潮期、激変期を切り開いていく」と述べた。 ===== 李はまた、困難に直面するなかでも、自立を掲げる主体思想の順守を擁護した。「政府は今後も、いかなる状況下でも自立と自己啓発の原則の下、自らの努力によって全てを解決していく国民の尊厳と基本的利益をしっかりと守っていく」と彼は述べた。 この原則の下、北朝鮮は軍事力を増強し、防衛産業全体の近代化を行っていくとも彼は主張。「全人民を武装させ、全土を要塞にして国防能力を強化していくという労働党の政策を実行するための取り組みを加速させていく」と表明した。 「どのような困難も、偉大なる同志・金正恩の下、我が国と国民が新たな革命の勝利に向かって進んでいくのを止めることはできない」 ===== Crowds rush towards Kim Jong Un during a large parade held in Kim Il Sung Square in celebration of North Korea’s 73rd founding anniversary.(KCTV, Sept. 9, 5 p.m.)https://t.co/XQuixSkCKk pic.twitter.com/EVurYBMhkC— NK NEWS (@nknewsorg) September 10, 2021 BREAKING: Rodong Sinmun photos of last night’s parade show Kim Jong Un in a suit with his top official Jo Yong Won standing next to him in some photos. Fireworks were held, as NK News initially reported per informed sources: https://t.co/1lUz8O4VGV pic.twitter.com/evz8DsdY1l— NK NEWS (@nknewsorg) September 9, 2021 BREAKING: Rodong Sinmun photos of the parade do not show any ballistic missiles, while photos show North Korean troops marching as Kim Jong Un watches pic.twitter.com/ha9F0DqR0w— NK NEWS (@nknewsorg) September 9, 2021

欧州選手権で現れた「多様性」の壁。サッカーが映す「揺れる英国社会」

2021年7月のサッカー欧州選手権では、イングランドが初めて決勝進出を果たし、英国は熱狂の渦に包まれました。しかし、決勝戦でペナルティーキック(PK)を外したイングランドの黒人選手3人が、試合終了後にSNS上で人種差別を受ける事件が起こり、大問題に発展。どうしてこのようなことが起きるのでしょうか? 現地在住のライターがサッカーを通して、英国における人種差別や多様性について説明します。

「パンデミックは未接種者によるもの」、ワクチン義務化に舵を切ったバイデン政権

<ワクチン接種の「義務化」に舵を切った米バイデン政権だが、共和党からは早くも「憲法違反」との声が上がっている> ジョー・バイデン米大統領は、独立記念日の2021年7月4日、国民に対して、新型コロナウイルスから独立する日は近いと呼びかけた。しかし、それから2カ月後の9月9日、バイデン政権はワクチン接種の「義務化」を否定するこれまでの方針を180度転換した。急増する感染率と入院者数に対応するためだ。 バイデンはすべての連邦政府職員に向けて、今後数カ月以内のワクチン接種を義務付ける命令を発出し、従わない場…

母国を愛しているからーーオリンピックを駆け抜けた南スーダン陸上選手・アブラハムが走る理由 特別マンガ連載「Running for peace and love」第4回

多くのアスリートが難しい状況の中、懸命に力を振り絞った「東京2020オリンピック・パラリンピック」。2020年から一年、未曽有の危機に遭いながら世界中の人々と選手たちが様々な思いを抱えながら開催されました。  …

コロナ後の初旅行には、大自然を思いきり体験できるアドベンチャーを

<コロナが終息したらどこに旅行に行きたい? 氷の洞窟から、噴火中の火山、謎の「迷子ツアー」まで、おすすめの旅先を紹介> コロナ禍のせいで閉じていた国境が、少しずつ開き始めた。夢にまで見た旅に向けて、準備を始めた旅行好きも多いはず。失われた時間を一気に取り戻すため、ここは大自然を巡る冒険旅行に出掛けてみては? ===== 01. 氷の洞窟を探検 デナリ国立公園(米アラスカ州) MICHAEL PHAM デナリ国立公園では、数千年に及ぶ氷の作用で出来上がった洞窟を専門ガイドと一緒に探索しよう。園内の18…