アンモナイトや三葉虫と並び、有名な古生物「アノマロカリス」をご存知でしょうか。
名前はピンと来なくとも、ロボットや書籍の表紙等で、その変な見た姿を目にした人は多いと思います。
「古生物」とは、絶滅し今は存在しない生物のことですが、化石の研究から様々な憶測がされています。
今回は、そんな「アノマロカリス」の生態についてご紹介します。
目次
- アノマロカリスの生態
- アノマロカリスの最新研究
アノマロカリスの生態
アノマロカリスの分類は、脊椎動物(背骨のある動物)、節足動物門(エビ、虫、クモなど)、アノマロカリス科、アノマロカリス属に位置づけられています。
このアノマロカリス類は硬い殻に覆われており、後にカニなどの甲殻類へと進化したのでは?と言われているんです。
アノマロカリスは、ヒレ(遊泳脚)を使って泳いだり、前肢(歩脚)を使って獲物捕獲や海底を歩いたりして移動をしていたようで、この行動はエビとよく似ています。
生息した時代は、恐竜が繁栄するよりはるか昔の古代カンブリア紀です。「カンブリア大爆発」というと、ピンと来る方も多いのではないでしょうか?
爆発的に生物が誕生した時代であり、生物の進化の速度も速かった時代です。
ダーウィンの進化論では、生物は長い年月をかけて進化するとされていますが、この時代はその法則に当てはまりません。
よって「ダーウィンのジレンマ」などと呼ばれている時代です。
科学とは様々な自然現象の法則を見つけることとも言われますが、このように稀に例外はあるのですね。
「もはや電車」古代、アノマロカリスの大きさは異常だった
アノマロカリスの大きさは、体長1mです。「なんだ、 大したことない」と思ったのではないでしょうか?
いいえ、カンブリア紀にこの大きさは、大事件なんです。
当時の多くの生物は、大きくとも10cm以下。10cm:100cm(1m)の比ですから、周りの生物の10倍以上の体長をしていたことになります。
例えば、多くの生物を人間サイズとすると、アノマロカリスは電車サイズになります。電車が襲ってきたら、私達は逃げられるでしょうか?
この圧倒的なサイズ感が、当時の海の食物連鎖の頂点にいた最強生物=アノマロカリスと言われる理由の1つです。
アノマロカリスの名前の由来
アノマロカリスという名前は「奇妙なエビ」という意味です。
アノマロカリスはエビにはあまり似ていないにも関わらず、なぜでしょうか?
これには、発見された経緯が関係しています。
カナダのバージェス頁岩からアノマロカリスの前肢(先が細く尖った触手)の一部が発見されました。その化石の節が、エビの腹部の一部と似ていて誤認されたことが、名前の由来となったのです。
後に、エビに見られる他の特徴がないことから、エビの仲間ではないことが判明し、現在では、アノマロカリス科、アノマロカリス属として独立して分類されています。
例えば、少し膨よかな人のあだ名が「ジャンボ」になったとします。例えその人が痩せたとしても、彼は浸透したジャンボと呼ばれ続けますよね?
このように、例えのちに意味が合わなくなったとしても、親しまれた名前で呼ばれ続けることは、生物界にはよくある事です。
アノマロカリスは優れた複眼を持っていた
アノマロカリスは「巨大で優れた複眼」を持っていました。
複眼とはたくさんの個眼が集まってできている眼で、持っていると動体視力が優れている=動く獲物を捕まえやすい、ということになります。
現在の動物だとトンボやハエが動体視力が優れていると言われますが、
トンボは約3万個、アノマロカリスは約1万6000個、ハエは3000個ほどの個眼を持っています。
比べると、いかにアノマロカリスの視力が優れているか分かりますね。
暗い海底にいた生物は視力に頼ることができないため、視力が発達しません。
しかしアノマロカリスは明るい海底に住んでいたため、視力を発達させられたようです。
一部では「アノマロカリスは顎が発達していないため、動く獲物が追えたとしても、カルシウムの殻に覆われた三葉虫等を噛み砕けなかったのでは?」
「最強生物ではなかったのでは?」と言われています。
しかし自慢の動体視力で、殻のない生物や脱皮直後の柔らかい三葉虫を狙えば、その問題は解決しそうです。
アノマロカリスの最新研究
2018年には、中国で、極小サイズ約(体長2cm)のアノマロカリスの化石が、2021年には、カナダで約50cmの化石が発見されました。
1m級で、当時にしては巨大な生物とされるアノマロカリスですが、2cmの種類などもいたようです。
非常にバラエティにとんだ仲間がたくさんいたのでしょうか。今後の発見が楽しみですね。
アノマロカリスの化石が見られる博物館
アノマロカリスの化石は主に以下の博物館で観察することができます。
福井県は、恐竜の化石が頻出する県としてで有名ですね。
東京都上野の国立科学博物館でも期間限定展示でアノマロカリスが展示されたこともあるようですが、まだまだ展示されている場所は少ないようです。
これだけ復元図が有名であるにも関わらず、少し意外な状況ですね。
まとめ
カンブリア紀の最強で最大の捕食者として有名なアノマロカリス。
巷で復元図を目にした際には、その巨大さ、視力の良さ、おもしろい名前の由来(奇妙なエビ)をぜひ思い出してみてください。
参考文献
Anomalocaris, the largest known Cambrian arthropod, D. E. G. Briggs
https://www.google.com/url?q=https://www.palass.org/publications/palaeontology-journal/archive/22/3/article_pp631-664&sa=D&source=docs&ust=1638178732750000&usg=AOvVaw3h4UgvEbpJFXl4hOLyAWU7
Anomalocaris and Other Large Animals in the Lower Cambrian Chengjiang Fauna of Southwest China, Hou Xian‐Guang
https://www.google.com/url?q=https://www.researchgate.net/publication/233050167_Anomalocaris_and_Other_Large_Animals_in_the_Lower_Cambrian_Chengjiang_Fauna_of_Southwest_China&sa=D&source=docs&ust=1638178750800000&usg=AOvVaw2gLG6brn5sokV6dVf5McSy
カンブリア紀のアノマロカリスの遊泳行動の獲得、五十嵐地広(PDFファイル)
http://hokkaido.jspe.or.jp/proc_archive/2017/pdf/17-C-04.pdf