もっと詳しく

<多核単細胞生物で粘菌の一種の「モジホコリ」が、国際宇宙ステーションに打ち上げられた……> フランスで「ブロブ」と名付けられたアメーボゾア(アメーバ動物)に属する多核単細胞生物で粘菌の一種の「モジホコリ」が、他の実験機器や物資、機材などとともにシグナスの無人宇宙補給機に積み込まれ、2021年8月10日、米ヴァージニア州ワロップス飛行施設から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられた。 720種類以上もの性別があり、脳がなくても学習する 黄色いスライム状のモジホコリが地球に初めて現れたのは約5億年前とみられる。口、脳、脚を持たないが、捕食したり、原形質流動でゆっくりと移動でき、優れた学習能力や記憶力、判断力を備えるユニークな生物だ。 生命体の多くは細胞の分裂と増殖によって成長し、繁殖するが、モジホコリは分裂することなく成長する単細胞生物であり、720種類以上もの性別がある。また、乾燥すると「菌核」と呼ばれる休眠体になる。 では、モジホコリは、無重力空間でどのような影響を受けるのだろうか。フランス国立宇宙研究センター(CNES)は、この謎を解明するべく、フランス国立科学研究センター(CNRS)との提携のもと、欧州宇宙機関(ESA)のミッションの一環として「ブロブ」を国際宇宙ステーションに送り込み、実験を行うことにした。 Audrey Dussutour/CNRS 同じ株のサンプルをフランス国内の約4500校に配布 国際宇宙ステーションには、「ブロブ」の同じ株から採取された4つのサンプルが休眠状態で到着。9月にフランス人宇宙飛行士トマ・ペスケ氏がペトリ皿で水分を与えてこれらのサンプルを覚醒させたうえで、食料を一切与えないグループとオートミール粥を与えるグループに分け、無重力空間でそれぞれの行動を観察する。 この実験は、フランスの小中高校で学ぶ10〜18歳の35万人以上の子供たちと一緒に実施される。国際宇宙ステーションに送り込まれたサンプルと同じ株から採取された休眠体のサンプルをフランス国内の約4500校に配布。子供たちは国際宇宙ステーションに滞在するペスケ氏とともに同一の実験を行い、地上と無重力空間での「ブロブ」の行動を比較する予定だ。 フランス国立宇宙研究センターのイブリン・クリティアド=マルシュ氏は「この実験は、環境が生命体に与える影響といったテーマについて子供たちの好奇心を刺激する貴重な体験となるだろう」と期待感を示している。 Science Launching on Northrop Grumman CRS-16 Mission to the Space Station ===== Can Slime Mould Solve Mazes? | Earth Lab Science Launching on Northrop Grumman CRS-16 Mission to the Space Station