<タリバンとの関係構築にいち早く動いた中国だが、控えめな介入は意外な平和をもたらすかもしれない> 米軍はアフガニスタンからほぼ撤退し、首都カブールはイスラム主義組織タリバンに制圧された。それでも、中国がアフガニスタンに軍を送る気配はない。 むしろ中国は、タリバンに対してはもちろんのこと、全ての当事者に物やカネを与えようとしている。これから中国が取ろうとしている道は、アメリカが示した国力と軍事力によるアフガニスタン再建計画よりもうまく、そして安上がりになりそうだ。 これまで中国がアフガニスタンに抱いて…
アフガン人協力者、これ以上の退避は絶望的? ビザを米軍が拒否、市内の暴力、空港にテロの勧告
<米軍撤退の期限があと数日に迫るなか、アフガニスタン人協力者の国外退避の道は狭まるばかり> アフガニスタンからの米軍撤退期限が8月31日に迫るなか、首都カブールの国際空港には、国外脱出を求める大勢のアフガニスタン人が押し寄せている。だがAP通信の報道によれば、出国書類を持っている協力者でさえ、空港ゲートを管理する米軍に追い返されることがあるという。その上、米英政府は25日夜、カブール空港に対するテロの具体的な脅威があるとして、空港に近づかないよう警告した。 アメリカの複数の当局者は8月25日、31日…
アフガニスタン撤退は、バイデンの「英断」だった
<「永遠の戦争」を続ける必要はない。アメリカは中国や温暖化などの、戦略課題にシフトするべき時だ> タリバンの攻勢を前にアフガニスタン政府軍はひとたまりもなく敗走し、アシュラフ・ガニ大統領はそそくさと国外に逃亡。残された市民は空港に殺到し、離陸する米軍機にしがみついて死者まで出る騒ぎに──。 こうした光景を目の当たりにして世界中のメディアが抗議の声を上げ、ジョー・バイデン米大統領は轟々たる非難の矢面に立たされた。 アメリカはアフガニスタンを失い、メンツも失った。「いざというとき頼りにならない国」として…
アフガニスタン政府軍はなぜあんなに弱かったのか、米政府はこの浪費を説明せよ
<2兆ドルも費やして戦果はゼロ。アフガン軍が弱い金食い虫だった責任の一端は、アメリカが大々的に戦争を委託した民間軍事会社のせいもあるのではないか> カブール陥落以後の1週間、これほどアフガニスタンについての情報があふれたことはないだろう。だが、アフガニスタンにおけるアメリカの戦争が、不透明で説明責任とは無縁の民間軍事会社に大々的に委託されていた事実については、ほとんど触れられることがない。 民主的なアフガニスタン建設のためとされた戦争は、これ以上なく非民主的なやり方で遂行されていたのだ。 いかにして…
タリバンの本質は20年前のまま、国際社会に受け入れられる努力は実るか
<米軍撤退に乗じて全土を掌握したタリバンだが、柔軟姿勢の指導部と凶暴な戦闘員はどっちが本物?> 略奪や処刑を伝える話が国中から聞こえてくる。首都カブール在住の市民は海外にいる友人知人に電子メールを送り、タリバンの戦闘員が住宅に押し入って女性のジャーナリストや医師を連行する様子を伝えている。 だが電光石火でアフガニスタン全土を制圧して以来、タリバン指導部はまさに真逆のメッセージを世界に発信している。現場の戦闘員には乱暴を慎めと命じ、国民に向けては自分たちの「善意」を信じろと呼び掛けている。 前政権で働…
バイデンは老い過ぎている、そのせいで人が死ぬ
<英紙の保守派論説委員が、アフガニスタンでの失敗はバイデンがかつての才能を使い果たした老人であることを示していると痛烈批判> イギリスで発行部数最大の新聞デイリー・テレグラフが社説で、ジョー・バイデンはアメリカの大統領を務めるには「使い果たし」「老い過ぎている」と言い切った。 アフガニスタンからの性急な米軍撤退でイスラム主義組織タリバンの想定外の復権を招いてしまったことで、バイデンはさんざんメディアの批判を浴びてきたが、78歳というバイデンの年齢を槍玉に挙げた媒体はこれまでほとんどなかった。 テレグ…
アフガン撤退は愚かな判断と英ブレア元首相が批判
<アメリカと共にアフガン戦争に参戦した当時の首相トニー・ブレアはアフガニスタンを見捨て、タリバンの復活を許したバイデンの判断を酷評した> 2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロの後、アメリカと共にアフガニスタン攻撃を決断し、自らも軍隊を送ったイギリスのトニー・ブレア元首相は、アフガニスタンから撤退したジョー・バイデン米大統領の決定を「愚か」と評し、「世界中のすべてのイスラム過激派組織が歓声を上げている」と警告した。 ブレアは8月21日、自身が主宰する研究機関のウェブサイトにエッセイを寄稿し…
「金鉱の上に横たわる貧者」―アフガンの地下資源と中国
アフガン人を中国では「金鉱の上に横たわる貧者」と称するが、タリバン勝利の前から中国がタリバンと経済協力を誓い合った狙いの一つにアフガンに眠る地下資源がある。これまでの動きと現状を考察してみよう。 アフガンに眠る地下資源の実態 中国の「商務部国際貿易経済合作(協力)研究院・中国駐アフガン大使館商務処・商務部対外投資経済合作司」は2020年、『対外投資合作国別(地区)指南 阿富汗(2020年版)』という調査報告書を発行した(以後、報告書)。商務部というのは中国の中央行政省庁の一つで、「阿富汗(アフハン)…
タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか
<20年ぶりにアフガニスタンの実権を掌握したタリバンとはいったい何者なのか、アフガニスタンはどうなるのか> アフガニスタンでは、イスラム原理主義組織タリバンが全権を掌握。国の将来を不安視する声が高まり、大勢のアフガニスタン人が、なんとか国外に脱出しようと試みている。 タリバンは1990年代後半、独自の厳格なシャリーア(イスラム法)解釈に沿って、アフガニスタンを支配していた。2001年に米軍がアフガニスタンに侵攻したことで権力の座を追われたが、その米軍の撤退完了が8月末に迫るなか、タリバンは各地で攻勢…
トランプ:米軍撤退の前にアフガニスタンの基地を「木っ端微塵に」すべきだった
<アフガニスタンにタリバン支配を復活させたバイデンの米軍撤退をトランプが批判> アフガニスタンのイスラム主義タリバンが8月15日に電光石火の速さで首都カブールを陥落させてから、ドナルド・トランプ前大統領がバイデン政権に対する批判をここぞとばかりに強めている。トランプは19日、ジョー・バイデン大統領の米軍撤退が早過ぎたと批判した。軍を撤退させるのはすべてが終わってからにすべきだった、という。 米軍撤退の間隙を縫ってタリバンがアフガニスタンの実権を握ったことに対し、バイデン政権には与党・民主党からも非難…