「石たち」「椅子たち」──日本語の複数形は増えている

<かつて無生物につけることのなかった「たち」が多用されるようになった。とはいえ、英語のような意味での複数形ではない> 次の俳句は松尾芭蕉の作品の中でもよく知られているが、この蛙(かわず/カエル)は、単数だろうか? それとも複数だろうか? 古池や蛙飛び込む水の音 ほとんどの人は単数だと答えるのではないだろうか。この句にはおびただしい数の翻訳があるが、ドイツ語訳を含め、ほとんどがカエルを単数にしている。たとえば、ドナルド・キーンは次のように訳している。 The ancient pond / A frog…