米病院で開会した「もう一つのオリンピック」と、小さな金メダリストたち

<「彼らはこの瞬間のために9カ月間トレーニングしてきた」という> 東京で開催中のオリンピックは意外な場所で盛り上がりを見せている。 米ミズーリ州カンザスシティにある統合医療施設セント・ルークス・ヘルスシステムズの看護師たちが、「小さなアスリート」たちのためにユニフォームを編んだ。 インスタグラムに投稿された映像には、アメリカ代表をイメージした衣装を身にまとった新生児たちの姿が納まっている。テニスラケットやバスケットボール、ウエイトリフティングのバーベルを模した編み物が枕元に置かれ、さまざまなスポーツ…

バイルズの棄権で米女子体操が得た金メダルより大切なもの

<心の健康を保つためにみずから団体決勝の演技を棄権したシモーネ・バイルズの大きな決断は、体操だけでなくスポーツ界に貴重な変化をもたらすかもしれない> 東京五輪の体操女子団体で準優勝したアメリカのジョーダン・チャイルズ選手はシモーネ・バイルズ選手を称え、アメリカチームの勝利はバイルズのおかげだと語った、とAP通信は伝えた。 「このメダルは間違いなく、バイルズのもの」と、チャイルズは言った。「もし彼女がいなかったら、私たちはこの場にいなかったし、銀メダリストにもなれなかった」 「あなたはすばらしい」と、…

コーチもいないオーストリアの数学者が金メダル、自転車ロードレースで番狂わせ

<東京五輪の自転車女子個人ロードレースで、数学者である世界ランキング94位のオーストリア代表アナ・キーゼンホファー選手が金メダルを獲得した> 2021年7月25日に実施された東京五輪の自転車女子個人ロードレースで、数学者である世界ランキング94位のオーストリア代表アナ・キーゼンホファー選手が金メダルを獲得した。 キーゼンホファー選手は、武蔵の森公園(東京都調布市)から富士スピードウェイ(静岡県)までの137キロにわたるコースで、残り約40キロの地点から独走し、優勝候補と目されていたオランダ代表アネミ…

東京五輪、視聴率苦戦の根本理由

<パンデミックの影響で異例の1年延期、ほぼ無観客、さらに開催都市への関心も今ひとつ?> 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のなか開幕した東京五輪は、近代五輪史上で他に類を見ない異例の大会となっている。だが、偉大なアスリートたちが競い合う雄姿を、テレビで視聴する人がどれだけいるのだろうか。多くのプロスポーツリーグが視聴者数の減少に頭を悩ませるなか、東京五輪もまた、TV視聴率が振るわない結果となる可能性がある。 アメリカ国内でオリンピック・パラリンピックの独占放映権を持つNBCには、視聴者…

競泳界の「鉄の女」が水の上を歩く奇跡の一枚

<あまりにも印象的な写真について、「新しい趣味」だと言う> 東京オリンピック開幕直前、最終調整に臨んだハンガリー代表の水泳選手カティンカ・ホッスーが「水の上を歩く」自身の姿をソーシャルメディアに投稿し、ネット上で話題となった。 32歳にして5度目のオリンピック出場となるホッスーは、女子競泳界で最も優れた選手の一人だ。個人メドレーをはじめ、多種目で結果を出してきたことから「鉄の女」の異名で広く知られている。2016年のリオ五輪では、200メートルと400メートルの個人メドレー、さらに100メートル背泳…

東京五輪でも米中「覇権争い」 金メダル競争は中国有利?

<貿易でも領土でも人権でもぶつかり合いながらトップの座を争う2つの超大国。オリンピックも例外ではない> 米中が相まみえれば競争に火がつく──当節、それは避けられない現実だ。貿易でも領有権でも新型コロナウイルスの起源でも、2つの超大国は激しくぶつかり合ってきた。スポーツも例外ではない。来年北京で開催予定の冬季五輪について、中国の人権問題を理由にボイコットすべきだという声もアメリカにはある。 コロナ禍で1年遅れで開催された東京五輪(8月8日まで)も同じだ。メダルの総獲得数で、米中はトップを争っている。 …

モーリー・ロバートソンが斬る日本メディアと国際情勢

<悪夢のグローバリズムに飲み込まれないための国際情勢の読み解き方とは――。モーリー・ロバートソンが五輪をめぐる日本の報道の「超忖度」からおすすめの海外メディア、「Z世代」が時代のカギである理由までを語り尽くす> なぜわれわれは国際情勢を学ばなければいけないか? まず、グローバリズムが人権を尊重しない資本主義の暴走であるという前提があります。そして例えばその資本主義の搾取と民族の弾圧・虐殺が関わっている事柄はたくさんあると思うのです。 中国政府の新疆ウイグル自治区での弾圧はその最たるものです。そして日…

「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手、審判の指摘に絶句

<「願わくば、東京でも着用したい」とオリビア・ブリーンは語る> 東京パラリンピックに陸上競技で出場予定の英代表選手オリビア・ブリーンは、日曜に走り幅跳びで出場した英国選手権で、競技用のショーツが「短すぎて不適切」として女性審判から指摘された。 これに対してブリーンは、「言葉を失った」と振り返っている。 脳性麻痺を患う24歳のブリーンは、2012年のロンドンパラリンピックの100メートル走で銅メダルを獲得。15年と17年の世界パラ陸上競技選手権では、100メートル走と走り幅跳びでそれぞれ金メダルを獲得…