世界初のブタ心臓のヒトへの臓器移植を実施 術後数週間が山場

ブタの心臓をヒトに移植 世界初の試み
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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ブタの心臓は現在も患者の体内で動いています。

1月7日、メリーランド大学メディカルセンター(UMMC)において、57歳の男性にブタから取り出した心臓を移植する大手術が行われました。

これまでにも、ブタ心臓の「弁」が人間の心臓に移植されることはありましたが、ブタの心臓全体の移植が行われたのは、世界ではじめてとなります。

ブタ心臓を移植された男性は現在も安全のために人工心肺装置につながれているものの、体調も良く、ブタ心臓も正常に機能しているようにみえる、とのこと。

しかし種を越えた臓器移植は通常、免疫の激しい拒絶反応を引き起こします。

研究者たちはいったいどんな方法で、拒絶反応を克服しようとしたのでしょうか?

目次 ブタの心臓をヒトに移植 世界初の試み ブタの心臓をヒトに移植 世界初の試み 他の動物の体の一部を人間に移植する試みは、古くから行われてきました…

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参考文献

University of Maryland School of Medicine Faculty Scientists and Clinicians Perform Historic First Successful Transplant of Porcine Heart into Adult Human with End-Stage Heart Disease
https://www.umms.org/ummc/news/2022/first-successful-transplant-of-porcine-heart-into-adult-human-heart
Surgeons transplant pig’s heart into dying human patient in a first
https://www.livescience.com/first-pig-heart-transplant-to-human
First-ever pig-to-human heart transplant offers hope for thousands in need of organs
https://www.usatoday.com/story/news/health/2022/01/10/human-pig-heart-transplant/9152951002/

神様、設定を盛りすぎ。チートでキモカワな「ハダカデバネズミ」の世界

ハダカデバネズミ
Credit: Smithsonian National Zoo

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ハダカデバネズミというネズミをご存知ですか?

毛のない見た目だけでなく、生態や能力など、「神様、この生き物に設定盛りすぎじゃね?」と思ってしまう生き物なんです。

今回は、そんなハダカデバネズミにフォーカスします。

目次 見た目:キモカワ系のインパクト機能:身体機能のポテンシャルがすごい生活:アリやハチみたいな社会性を営む 見た目:キモカワ系のインパクト ハダカ…

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参考文献

ニューズウィーク日本版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/01/post-9423.php
JBS
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2016.880071/data/index.html
CNN
https://www.cnn.co.jp/fringe/35100615-2.html
積水化学
https://www.sekisui.co.jp/csr/sustainability_products/contribution/nextgen/bio_mimetics/1239633_27856.html

元論文

eLife
https://elifesciences.org/articles/31157

「ジャガランディ」のアルビノを保護、コロンビア初

コロンビアで見つかったアルビノのジャガランディ
Credit: Oliver Browning(Independent) – Rare albino puma cub discovered and rescued in Colombia(2021)

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みなさんは「ジャガランディ」という動物をご存知でしょうか。

ジャガランディは、中央米と南米に分布するネコ科の食肉類で、彼らより大きなピューマの近縁種です。

ネコのような見た目が愛らしいジャガランディですが、このほど、南米コロンビアで、きわめて珍しいアルビノのジャガランディが保護されました。

メスの子どもであり、アルビノ個体の発見は同国初のことです。

目次 ジャガランディとはどんな生き物? ジャガランディとはどんな生き物? ジャガランディ(学名:Herpailurus yagouaroundi)は…

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参考文献

Jaguarundi cub rescued in Colombia has rare albino disorder that leaves it with white fur and red eyes making it vulnerable to predators in the wild: Animal is transferred to a conservation park
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10353217/Rare-albino-jaguarundi-cub-Colombia-transferred-conservation-park.html
Rare albino jaguarundi cub rescued in Colombia
https://local12.com/news/offbeat/rare-albino-jaguarundi-cub-rescued-in-colombia-vets-veternarian-female-species-camoflauge-prey-medical-attention-puma

エイズウイルスを利用した遺伝子治療で鎌状赤血球症を治療することに成功!

遺伝子治療で鎌状赤血球症を治療することに成功!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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患者の遺伝子を書き換える遺伝子治療がまた実現しました。

米国アラバマ大学で行われた研究によれば、鎌状赤血球症と呼ばれる特殊な遺伝病を遺伝子治療によって治療することに成功した、とのこと。

鎌状赤血球症は、高校の生物の教科書にも登場する、古くから知られる遺伝病であり、治療困難な難病として知られていました。

しかし正常な遺伝子を改造された「有名なウイルス」を使って細胞内に送り込むことで、遺伝子治療を成功させることができました。

研究内容の詳細は12月12日に、世界5大医学雑誌の筆頭である『New England Journal of Medicine』に掲載されています。

目次 遺伝子治療で鎌状赤血球症を治療することに成功!元エイズウイルスが遺伝治療の鍵となるコロナウイルスも人類の武器になるかもしれない 遺伝子治療で鎌…

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参考文献

Experimental Gene Therapy Reverses Sickle Cell Disease for Years
https://www.cuimc.columbia.edu/news/experimental-gene-therapy-reverses-sickle-cell-disease-years

元論文

Biologic and Clinical Efficacy of LentiGlobin for Sickle Cell Disease
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2117175

うんちの頻度は「遺伝子によって決まっている」可能性がある 豪州研究

「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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うんちの頻度は遺伝子が決めているようです。

オーストラリアのモナッシュ大学で行われた研究によれば、うんちの頻度は14の異なる遺伝子の領域によってコントロールされている、とのこと。

どうやら私たちの遺伝子は「うんち」の生成だけでなく「うんち」の頻度も規定しているようです。

研究内容の詳細は12月8日に『Cell Genomics』に掲載されました。

目次 「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明! 「うんち」の頻度は遺伝子によって決まっている可能性があると判明! あまり意識…

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参考文献

How often you may poop may be (partly) written in your genes
https://www.livescience.com/genetics-of-bowel-movement-frequency-poop-and-ibs

元論文

GWAS of stool frequency provides insights into gastrointestinal motility and irritable bowel syndrome
https://www.cell.com/cell-genomics/fulltext/S2666-979X(21)00085-9#%20

アブラムシを引き寄せて翅を生やして拡散する驚くべき「寄生RNA」

Credit:Canva

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寄生RNAにとっては生物もウイルスも道具のようです。

日本の北海道大学で行われた研究によれば、ウイルスの内部に潜む「寄生RNA(Y-sat)」に、アブラムシの形態を変化させる能力があることが発見された、とのこと。

「寄生RNA」とは、ウイルス遺伝子の中に配列情報となって寄生する、生命よりも情報に近い存在です。

今回の「寄生RNA(Y-sat)」は植物とアブラムシに感染するウイルスに寄生して、植物内に入り込むと葉の色をアブラムシの好む黄色に変色させ、葉の汁とともにアブラムシの体内に侵入。

その後、今度はアブラムシに翅を生えさせて、自らをさらに広範囲に拡散させているようです。

しかしそのような配列情報が、いったいどのようにして生物の体を操作しているのでしょうか?

研究内容の詳細は12月6日に『Nature Communications』にて公開されています。

目次 アブラムシに翅を生やさせて拡散する「寄生RNA」の仕組みを解明!「寄生RNA」は宿主の宿主までコントロールする アブラムシに翅を生やさせて拡散…

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参考文献

アブラムシを引き寄せ,翅を生やして自らを運ばせるRNAがいた!~植物ウイルスに寄生するY-サテライトRNA分子の驚くべき生き残り戦略の解明~
https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/12/rnay-rna.html

元論文

A plant virus satellite RNA directly accelerates wing formation in its insect vector for spread
https://www.nature.com/articles/s41467-021-27330-4

ウーパールーパーが陸生への「変態能力」を手に入れてしまった裏話

水生から陸生に変態するアホロートルの裏話とは
Credit: Courtney Bailey(iflscience) – Axolotls Can Spontaneously Turn From Aquatic Animals To Air-Breathing Land Creatures(2021)

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「アホロートル」という生物をご存知でしょうか?

アホロートル (Axolotl)とは、アステカ文明で使われたナワトル語の「水」と「犬」を組み合わせたもの。

メキシコ原産の両生類の仲間で、一般には、メキシコサンショウウオ(学名:Ambystoma mexicanum)の名で通っています。

メキシコサンショウウオ、つまり、ウーパールーパーのことです。

ここでは「アホロートル」と呼ぶことにしますが、彼らには稀に、水生から陸生に変態する現象が起きます。

アホロートルは元々、水中で一生を過ごす生物だったのですが、ある出来事がきっかけで「変態」の能力を獲得してしまったのです。

そこで今回は、ペットとしても人気なアホロートルについて、変態を手に入れるに至った裏話も含め、紹介していきます。

目次 死ぬまで「幼い姿」のままなぜ「変態能力」を手に入れてしまったのか 死ぬまで「幼い姿」のまま 野生のアホロートルは、メキシコの首都メキシコシティ…

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参考文献

Aquatic Axolotls Can Spontaneously Turn Into Air-Breathing Axolotl Morphs
https://www.iflscience.com/plants-and-animals/aquatic-axolotls-can-spontaneously-turn-into-airbreathing-axolotl-morphs/

セイヨウミツバチ 実は「アジア出身」だったと明らかに

セイヨウミツバチはアジアで誕生した可能性が大
Credit: jp.depositphotos

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ミツバチの一種であるセイヨウミツバチ(学名: Apis mellifera)は、今日、ヨーロッパからアフリカ、中近東まで世界に広く分布しています。

一方、その起源の解明は、何十年にもわたって専門家の悩みの種となっています。

しかしこのほど、ヨーク大学(York University・カナダ)の研究により、セイヨウミツバチは、アジアで生まれた可能性が高いことが判明しました。

名前に”セイヨウ(西洋)”とあるからといって、生まれはヨーロッパのどこかではないようです。

研究は、12月3日付けで学術誌『Science Advances』に掲載されています。

目次 セイヨウミツバチが養蜂家に人気な理由とは セイヨウミツバチが養蜂家に人気な理由とは セイヨウミツバチは、養蜂家にとても人気があり、農作物の受粉…

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参考文献

Mysterious origins of western honey bees revealed
https://www.earth.com/news/mysterious-origins-of-western-honey-bees-revealed/
Where did western honey bees come from? New research finds the sweet spot
https://phys.org/news/2021-12-western-honey-bees-sweet.html

元論文

Thrice out of Asia and the adaptive radiation of the western honey bee
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abj2151

微生物インクで「生きた物体」を3Dプリント ブドウ糖液で成長も確認

研究チームは大腸菌から開発した微生物インクで成長できる3Dプリントを実現した
Credit:Duraj-Thatte et al., Nature Communications(2021)

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3Dプリンタは今やなんでも印刷できる印象があり、生物学的な構造を印刷しようとする研究も増えてきています。

今回、米国ノースイースタン大学(Northeastern University)の研究チームが開発したのは、大腸菌の細胞から作った新しいタイプのバイオインクです。

このインクの新しい点は、実際に印刷される物質が生きた細胞であり、ブドウ糖液などに浸けて栄養補給すると、成長するところだといいます。

研究の詳細は、11月23日付でオープンアクセスジャーナル『Nature Communications』に掲載されています。

目次 生きている建材 生きている建材 宇宙へ人類が進出したとき、そこでの暮らしのためには生活するための建物が必要になります。 これを作り出すために、…

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参考文献

WITH THIS NEW TECHNOLOGY, 3D PRINTING COMES TO LIFE … LITERALLY.
https://news.northeastern.edu/2021/11/23/3d-printing-comes-to-life/
This 3D-Printer Uses Ink Made From Microbes to Print Blobs That Are Alive
https://www.sciencealert.com/this-3d-printer-prints-things-that-are-alive

元論文

Programmable microbial ink for 3D printing of living materials produced from genetically engineered protein nanofibers
https://www.nature.com/articles/s41467-021-26791-x

腸は第2の脳ではなく、むしろ「脳の方が腸から生まれた」と判明!

腸は第2の脳ではなくむしろ腸の一部から脳がうまれたと判明!
Credit:Canva . ナゾロジー運営部

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ニューロンの起源は腸のようです。

ドイツにあるヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)で行われた研究によれば、脳を構成するニューロンの起源は、消化システムの制御を行う細胞であった可能性が高い、とのこと。

近年では腸にもニューロンがあり、脳との関係の深さから「腸は第2の脳」と言われるようになりましたが、逆でした。

研究によれば、ニューロンの原形となる細胞は最初に消化システムで誕生し、後に脳に転用されるようになったようです。

つまり順番にこだわるならば、腸は第2の脳ではなくむしろ、脳が第2の腸ということになります。

しかし、研究者たちはこの常識を引っくり返すような結論を、いかにして導き出したのでしょうか?

研究内容の詳細は11月4日に『Science』に掲載されました。

目次 腸は第2の脳ではなくむしろ腸の一部から脳がうまれたと判明!脳は腸の一部が変化して誕生した腸内細菌叢は脳より古い起源をもっている 腸は第2の脳で…

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参考文献

More than a gut reaction
https://www.embl.org/news/science/more-than-a-gut-reaction/

元論文

Profiling cellular diversity in sponges informs animal cell type and nervous system evolution
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abj2949