失敗学の研究者が見た、日本人の「ゼロリスク」信奉

<「信者」を減らさないと、日本の将来は暗い。東京五輪を機に、チャンスとリスクを議論して判断できる日本へと変わるべきだ> 人間は何かを行う前に、「チャンス」と「リスク」を秤(はかり)に掛けて判断する。東京五輪では、選手が国民に感動を与えることがチャンスで、試合場の選手団や観客から新型コロナウイルスが広がるのがリスクである。 しかし、テレビや新聞はリスクだけを報道し、秤に掛けるような議論は進まなかった。結局、時間切れで中止にはならず、IOC(国際オリンピック委員会)にいいように引き込まれて大会は始まった…

日本は世界で4番目に気候変動のリスクが高い国に 台風・豪雨影響…国連レポート

<台風や豪雨は国内の問題に留まらず、世界規模の異常気象を代表する例となっていた> 地球温暖化の影響が懸念されるようになって久しいが、今夏はその影響を象徴するかのような出来事が相次いだ。 気温49.5度を記録したカナダ西岸では数百件の制御不能な森林火災が発生し、海ではムール貝が生きたまま半煮えとなった。ニューヨークでは先日、大規模な水害に見舞われ、地下鉄の昇降口に降り注ぐ滝のような雨の動画が出回っている。ヨーロッパでもシチリア島で48度超が報告され、欧州の観測史上最高を記録したほか、各地で山火事が多発…

日本の自民党次期総裁候補を中国はどう見ているか?

菅総理の次期自民党総裁候補断念の意思が発表されると、中国は一斉に反応し、特に中国共産党系の環球時報は矢継ぎ早に論評を出している。日中関係が関心の対象だが、中でも高市早苗氏に関する論評は度肝を抜く。 環球時報の菅総理辞任に対する反応 自民党の次期総裁立候補者に対する個別の論評を見る前に、まずは菅総理辞任に対する全体的な反応を見てみよう。 菅総理は「自民党総裁候補に立候補しない」と表明しただけだが、それはすなわち次期総理大臣候補には立候補しないという意思表示をしたに等しいと中国は位置付けており、ならば次…

「ヒュブリス」だった東京五輪が日本に残す教訓

<「安全・安心」とは何だったのか。IOCは「上から目線」だったが、政府はそれを事実上支持した。五輪関係者向けに厳しいルールを定めたが、非現実的で、ほとんどチェックされなかった。今大会はいわば「ヒュブリス五輪」だった> いったい何回、聞かされたのか。「安全・安心な大会」と。 2020年3月に東京五輪・パラリンピックの延期が決まってから大会組織委員会の全ての記者会見で、1時間に少なくとも10回は耳にした。スローガンのようになっていた。 「安全・安心」とは何か? と私は何度も責任者に尋ねたが、確かな答えを…

フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物を発見!

フキノトウから「がんを壊死させる」強力な化合物が発見! 動物実験でも効果確認
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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がん治療の未来はフキノトウが握っているかもしれません。

9月1日に、日本の岐阜大学の研究者たちにより『The Journal of Clinical Investigation』に掲載された論文によれば、日本原産のフキノトウの苦味成分から、極めて強力かつ副作用の少ない、抗がん作用のある化合物「ペタシン」が発見されたとのこと。

効果は動物実験においても確認されており、がんになったマウスの腹腔(横隔膜の下)にペタシンを投与することで、がん細胞の増殖と転移を防ぎ、縮小させることにも成功

さらにマウスの体には、目立った害も現れなかったそうです。

しかし、どうしてペタシンに、これほどの抗がん作用があったのでしょうか?

以下では、発見につながった研究者たちの地道な努力を紹介しつつ、ペタシンの秘密に迫っていきます。

目次 フキノトウから抽出されたペタシンはがん細胞のミトコンドリアを攻撃するペタシンは動物実験でも抗がん作用が確認されたペタシンは既存のミトコンドリア…

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参考文献

日本原産フキノトウから  がんの増殖・転移を強く抑制する物質を発見
https://www.gifu-u.ac.jp/about/publication/press/20210826.pdf

元論文

Petasin potently inhibits mitochondrial complex I–based metabolism that supports tumor growth and metastasis
https://www.jci.org/articles/view/139933

日本で「食えている画家」は30~50人だけ 完売画家が考える芸術界の問題点

<15年以上のキャリアの中で描いた約700枚の絵を完売させ、その作風は唯一無二と評される洋画家の中島健太氏。「『絵描きは食えない』を変えたい」という彼はこのたび、『完売画家』(CCCメディアハウス)を上梓した。日本の芸術界の現状、業界で生きるために必要なこと、これからの芸術とビジネスの在り方について、赤裸々に綴った本書から「はじめに」を抜粋する> ■はじめに 「絵描きは食えない」を変えたい――700以上のご縁 本書は現役プロ画家の僕が、「日本の芸術界(以下、業界)の現状」「業界で生きるために必要なこ…

沖縄空域を中国ドローンが3日連続で飛行、自衛隊の共同訓練中に

<日本が中国による東シナ海や南シナ海、台湾海峡への軍備拡張への危機感を強めるなかでの中国の動きは何を意味するのか> 日本の防衛省は8月26日、中国の軍事用無人偵察機(ドローン)および哨戒機が飛行するのを3日連続で確認し、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進(スクランブル)させたと発表した。日本が現在、この近辺で複数のパートナー国とともに一連の共同訓練を行なっているなかでの出来事だった。 自衛隊の統合幕僚監部によれば、24日から26日までの3日連続で、中国の無人航空機(UAV)が目撃された。公表された無人機の…

なぜ今、日本でSDGsへの関心が高まっているのか

<2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)だが、日本で潮目が変わったのは2017年。いま未来へ向けたさまざまな努力が重ねられており、世界をリードするような企業も生まれ始めている。Think the Earthの上田壮一理事に聞いた> ニューズウィーク日本版では、8月24日発売(8月31日号)の「日本を変えるSDGs」特集で、大企業から自治体、ベンチャーまで、日本のさまざまなSDGs事例を取り上げている。 最近話題に上ることの多いSDGs(持続可能な開発目標)だが、なぜ今、関心が高ま…

池内恵、細谷雄一、待鳥聡史が語り合った「山崎正和論」〈1周忌〉

<日本を代表する知識人・山崎正和が2020年8月19日にこの世を去り、1年がたった。池内恵・東京大学教授、細谷雄一・慶応義塾大学教授、待鳥聡史・京都大学教授という70年代生まれの論客が語り合った、山崎正和との出会いと思い出を再録する> ※座談会は2020年8月28日放送の「国際政治チャンネル」より。本稿は『別冊アステイオン それぞれの山崎正和』(CCCメディアハウス)所収。 「文学便覧」の人 ■池内 山崎先生は私たちの共通の、何と言うんでしょうね? ■細谷 「メンター」じゃないですか? ■池内 私た…

インド映画界には、撮影監督として引っ張りだこの日本人がいる【世界が尊敬する日本人】

<2014年の映画『メアリー・コム』の撮影監督として一躍有名になり、さまざまな作品を撮り続ける中原圭子。ボリウッドで働くとはどういうものなのか、インタビューした> ※8月10日/17日号(8月3日発売)は「世界が尊敬する日本人100」特集。CHAI、猪子寿之、吾峠呼世晴、東信、岩崎明子、ヒカル・ナカムラ、菊野昌宏、阿古智子、小澤マリア……。免疫学者からユーチューバーまで、コロナ禍に負けず輝きを放つ日本の天才・異才・奇才100人を取り上げています。 「映画監督は自分のスタイルを持っていないとい…