「脳の構造は非常に複雑だが、脳を変えるのは簡単だ」。『脳メンテナンス大全』の著者で米国の脳科学者クリステン・ウィルミア氏はこう語る。同氏は脳に障害を抱える患者に対し、食事などの生活習慣を変えることで、脳機能を劇的に回復させてきた。本稿では、誰でも実践しやすい「10分で脳を活性化させる方法」を紹介す…
視覚的イメージが作れない「アファンタジア」とは何なのか?
「眠れない夜には、頭の中で羊を数えるとよい」と言われてきました。
実際に頭の中で羊をイメージし、1匹ずつ右から左へと通過させてカウントした人は多いでしょう。
ほとんどの人にとって、このように「頭の中で情景をイメージする」ことは、ごく普通のことです。
しかし中には、頭で映像を作り出せない「アファンタジア(Aphantasia)」という状態に悩まされる人がいます。
今回は、最近徐々に明らかになってきたアファンタジアについて解説します。
目次 脳内イメージが作れない「アファンタジア」アファンタジアの原因は「映像記憶を引き出す神経回路の切断」?Firefoxの創設者である天才プログラマ…
参考文献
What Is Aphantasia?
https://www.scienceabc.com/humans/what-is-aphantasia-definition-cure.html
人工培養脳にテニスゲームを教えると5分で理解し遊び始めると判明!
人工培養脳が人間のゲームで遊びはじめました。
英国ロンドン大学で行われた研究によれば、培養されたヒトの脳にテニスゲームの遊び方を教えるのに成功した、とのこと。
これまで作られた人工培養脳(脳オルガノイド)は培養漕の中で浮かんだり、目を生やして辺りを見回すくらいしかできませんでした。
今回の脳オルガノイドは目はありませんが、無数の電極と接続されており、ゲーム機からボールの位置情報を受け取ると、自分の意思で「バー」を動かしてボールを跳ね返します。
ゲームをプレイする「意思」と「知性」を持った脳オルガノイドの出現により、脳オルガノイドは単なる人体実験の代用品から「生体AI」へと進化すると期待されます。
研究内容の詳細は12月3日にプレプリントサーバーの『boiRxiv』にて公開されています。
目次 人工培養脳にテニスゲームを教えると5分で理解し遊び始めると判明!「ヒト脳オルガノイド」VS「マウス脳オルガノイド」どっちがゲーム上手か?脳オル…
参考文献
Human brain cells grown in a petri dish learn to play Pong faster than AI: Mini-brains fire off neurons to move the paddle back and forth according to the location of the ball in the video game
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10322247/Human-brain-cells-grown-petri-dish-learn-play-Pong-faster-AII.html#comments
元論文
In vitro neurons learn and exhibit sentience when embodied in a simulated game-world
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.12.02.471005v2.full
奇才の画家ダリやエジソンが使った「創造性を高める睡眠法」 驚きの効果を実証
美術の巨匠であるサルバドール・ダリや発明王トーマス・エジソンには共通点があります。
どちらも創造性を発揮するために特殊な睡眠法を行っていたのです。
フランス・パリ脳研究所(ICM)に所属するデルフィン・オウディエッテ氏ら研究チームは、ダリやエジソンが使った睡眠法の効果を実証しました。
深い睡眠に入った段階ですぐに目を覚ますと、創造性が高まっていたのです。
研究の詳細は、12月8日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。
目次 ダリやエジソンが使った創造性を高める睡眠法作業前にカップを手に持って仮眠すると結果が大きく変わる?深い睡眠に入った瞬間に起きると創造性が向上す…
参考文献
Sleep technique used by Salvador Dalí really works
https://www.livescience.com/little-known-sleep-stage-may-be-creative-sweet-spot
Interrupting sleep after a few minutes can boost creativity
https://www.newscientist.com/article/2300883-interrupting-sleep-after-a-few-minutes-can-boost-creativity/?utm_campaign=RSS%7CNSNS&utm_source=NSNS&utm_medium=RSS&utm_content=news
元論文
Sleep onset is a creative sweet spot
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abj5866
自虐ネタが得意な人は脳構造が特殊で創造性が高い可能性がある!
自虐ネタは創造性と関連していました。
中国の首都師範大学(CNU)で行われた研究によれば、自虐ネタを使いこなす人は脳領域(眼窩前頭皮質)の灰白質(細胞量)が大きく、発想力に代表される創造性に優れている可能性がある、とのこと。
自虐ネタは自分をネタにするテンプレートのないユーモアであり、即興性や演出力も求められるため、創造性がかかわる分野だったようです。
研究内容の詳細は『Brain Imaging and Behavior』に掲載されています。
目次 創造性にあふれた大物たちは自虐ネタでレジェンドを作っている自虐ネタが好きな人は特殊な脳構造をしていおり創造性が干渉する 創造性にあふれた大物た…
参考文献
Neuroimaging study reveals link between self-defeating humor, creativity, and gray matter in the frontal cortex
https://www.psypost.org/2021/12/neuroimaging-study-reveals-link-between-self-defeating-humor-creativity-and-gray-matter-in-the-frontal-cortex-62195
元論文
Relationship between self-defeating humor and the Gray matter volume in the orbital frontal cortex: the moderating effect of divergent thinking
https://link.springer.com/article/10.1007/s11682-020-00412-5
ボクサーやアメフト選手はアルツハイマー病のリスクが3倍高い 米研究
ボクシングやアメフトなどの、競技者同士が力いっぱいぶつかり合うフルコンタクトスポーツでは、毎回脳に強い衝撃が加わります。
新しい研究では、アメリカ・ボストン大学(Boston University)アルツハイマー病研究センターに所属するマイケル・アロスコ氏ら研究チームが、脳をMRIで見えたときの白い斑点が、アルツハイマー病に関連していると発表しました。
特にフルコンタクトスポーツの選手はこの傾向が大きく、アルツハイマー病のリスクは3倍だと判明したそう。
研究の詳細は、11月24日付の科学誌『Neurology』に掲載されています。
目次 加齢によって進行する「大脳白質病変」ボクサーやアメフト選手は大脳白質病変が進行しやすく、アルツハイマー病のリスクも高い 加齢によって進行する「…
参考文献
Brain Lesions on MRI Linked to Years of Playing Football
https://www.bumc.bu.edu/busm/2021/11/26/brain-lesions-on-mri-linked-to-years-of-playing-football/
Men who were in boxing clubs as youngsters may be THREE times as likely to develop Alzheimer’s disease, study warns
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10246103/Health-Men-boxed-youngsters-THREE-times-likely-develop-Alzheimers.html?ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490&ito=1490
元論文
Association Between Antemortem FLAIR White Matter Hyperintensities and Neuropathology in Brain Donors Exposed to Repetitive Head Impacts
https://n.neurology.org/content/early/2021/11/23/WNL.0000000000013012
リスカなど自傷行為の根底にある脳のメカニズムを解明!
自傷行為と脳の関係が解き明かされました。
米国のミネソタ大学で行われた研究によれば、リストカットなどの自傷行為をしている少女たちの脳を調べたところ、恐怖を感じる脳領域(偏桃体)の活動量が変化し、理性にかかわる脳領域(前頭前野内側)との接続性が低下していた、とのこと。
さらに重度の自傷行為を行っている少女たちは、ストレスを感じてもストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が鈍くなっていました。
どうやら重度の自傷行為の裏には、脳の接続不良やホルモンの分泌不足など、神経系の物理的な異常が潜んでいるようです。
研究内容の詳細は『Development and Psychopathology』で公開されています。
目次 リスカなどの自傷行為の根底にある脳のメカニズムを解明!自傷によって脳の接続が失われ「恐怖」が壊れる「逃げ」のリスカが自傷中毒を引き起こす リス…
参考文献
New study sheds light on the neurobiological mechanisms underlying non-suicidal self-injury
https://www.psypost.org/2021/11/new-study-sheds-light-on-the-neurobiological-mechanisms-underlying-non-suicidal-self-injury-62170
The Self-Harming Brain New research looks at the neurobiology of self-harm in teens.
https://www.psychologytoday.com/us/blog/domestic-intelligence/202001/the-self-harming-brain
元論文
Multimodal assessment of sustained threat in adolescents with nonsuicidal self-injury
https://www.cambridge.org/core/journals/development-and-psychopathology/article/multimodal-assessment-of-sustained-threat-in-adolescents-with-nonsuicidal-selfinjury/698AD1E73B8E0061BA9C48156F63AA40
Incidence, clinical management, and mortality risk following self harm among children and adolescents: cohort study in primary care
https://www.bmj.com/content/359/bmj.j4351
言語能力は「道具を使った作業をすると向上する」と判明
言語能力を高めるには道具を使った作業が効くようです。
フランスのリヨン神経科学センター(CRNL)で行われた研究によれば、言語の構文を理解する脳回路と道具の使用スキルにかかわる脳回路が共通であり、一方を練習すれば他方の上昇が起こった、とのこと。
複雑な構文を学習をしようと思っているなら合間合間に、道具を使った複雑な作業をすると、相乗効果が得られるかもしれません。
研究内容は11月12日に『Science』に掲載されました。
目次 言語能力と道具スキルは同じ脳回路が担当している道具の練習で言語能力が上がり言語の練習で道具の扱いが上手くなる本業の地力をあげるには他分野に手を…
参考文献
Using Tools Improves Our Language Skills
https://presse.inserm.fr/en/using-tools-improves-our-language-skills/44084/
元論文
Tool use and language share syntactic processes and neural patterns in the basal ganglia
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abe0874
シナプスは筋肉に匹敵する「力で情報伝達」していたと判明!
脳は力(物理)で記憶するようです。
日本の東京大学で行われた研究によれば、脳細胞の接合部「シナプス」は細胞同士の物理的な圧力を使って情報伝達を行い長期記憶を形成していく、とのこと。
脳細胞の情報伝達といえば、電気を使う「電気伝達」や神経伝達物質による「化学伝達」だけであると考えられていましたが、細胞同士の押し合いによる純粋な「力学的伝達」も存在するようです。
さらに脳細胞同士の押し合いの力を測定したところ、1cm平方あたり500gと筋肉に匹敵することが判明。
どうやら私たちの脳細胞は思ったよりもずっとマッスル(ある意味で脳筋)な方法で情報伝達を行っていたようです。
研究内容の詳細は11月24日に『Nature』に掲載されました。
目次 シナプスでは筋肉に匹敵する「力で情報伝達」がされていたと判明!個人差の根源は脳細胞の力学的特性にあるかもしれない シナプスでは筋肉に匹敵する「…
参考文献
「 脳は記憶を力で刻む—シナプスの力と圧感覚による新しい伝達様式の発見— 」
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20211125/pdf/20211125.pdf
元論文
Mechanical actions of dendritic-spine enlargement on presynaptic exocytosis
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04125-7
「細部を覚えていない」ことはボケではなく脳が正常に機能している証だった
私たちの脳は、細部を忘れたり、間違って記憶していたりする場合があります。
「先週、ピクニックのお弁当に入れてくれた梅おにぎり美味しかったよ」なんて話を家族としたら、「あら、作ったの高菜のおにぎりよ」なんて言われたり、そんな記憶違いは日常でちょくちょく起こります。
そんなふうに、つい最近の出来事が正確に記憶できていないと、「私、ボケてきた?」と不安になるかもしれません。
最近のことを記憶違いしてしまうのは、いわゆるボケの始まりなのでしょうか?
ところがアメリカ・ロンチェスター大学(University of Rochester)の認知科学者ロバート・ジェイコブス氏は、「細部を覚えていないのは脳機能が正常に働いている証拠」だと語ります。
実のところ、記憶の不確かさを理由に、脳機能の低下を心配する必要はないかもしれません。
目次 人間の知覚や認知は最適なのか?細部を間違えて覚えるのは脳の最適化によるものだった 人間の知覚や認知は最適なのか? 私たちは、細部を事実とは異な…
参考文献
Misremembering might actually be a sign your memory is working optimally
https://theconversation.com/misremembering-might-actually-be-a-sign-your-memory-is-working-optimally-166089