タリバン批判報道をしてきた現地ジャーナリストが窮地に

<米主要3紙がバイデン政権に現地ジャーナリストの国外退避支援を要請。「勇敢な仲間たち」が命の危険にさらされていると訴えた> アフガニスタンの反政府勢力タリバンが8月15日、首都カブールを制圧して全土掌握を宣言したことを受けて、アメリカの新聞社は一斉に、現地にいるジャーナリストや現地スタッフの救援をジョー・バイデン米大統領に求めた。 ワシントン・ポストの発行人は、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官に宛てて、「ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、およびワシントン・ポ…

中国王毅外相「米国の性急なアフガニスタン撤退が深刻な悪影響」 安定確保には協力

中国の王毅国務委員兼外相は16日、アフガニスタン情勢を巡りブリンケン米国務長官と電話で協議し、駐留米軍の性急な撤退が「深刻な悪影響」をもたらしたと非難した。ただ、現地の安定確保に向けて米政府と協力する考えを示した。 米国務省は声明で、ブリンケン氏と王氏が「安全保障の状況や米中市民の安全確保に向けたそれぞれの取り組み」について協議したと発表。 ブリンケン氏が別途、ロシアのラブロフ外相と電話協議したことも明らかにした。 中国国営中央テレビ(CCTV)によると、王氏はブリンケン氏との電話で、アフガンの現状…

地球上空400キロ、国際宇宙ステーションで開催された「もう一つのオリンピック」

<無重力空間で行われた史上初の「宇宙オリンピック」──7人の宇宙飛行士たちによる祭典は大成功に終わった> 地球から400キロ離れた国際宇宙ステーション(ISS)では、7人の宇宙飛行士によって史上初の「宇宙オリンピック」が開催された。無重力状態で彼らが競技に臨む映像を欧州宇宙機関(ESA)が公開している。 東京五輪2020に触発された長期滞在クルーたちは、ISSに到着した宇宙船によって「チーム・ドラゴン」と「チーム・ソユーズ」に分かれた。 チーム・ドラゴンのメンバーは、NASAのメーガン・マッカーサー…

5億年前から地球に生息するスライム状の「モジホコリ」がISSへ送り込まれる

<多核単細胞生物で粘菌の一種の「モジホコリ」が、国際宇宙ステーションに打ち上げられた……> フランスで「ブロブ」と名付けられたアメーボゾア(アメーバ動物)に属する多核単細胞生物で粘菌の一種の「モジホコリ」が、他の実験機器や物資、機材などとともにシグナスの無人宇宙補給機に積み込まれ、2021年8月10日、米ヴァージニア州ワロップス飛行施設から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げられた。 720種類以上もの性別があり、脳がなくても学習する 黄色いスライム状のモジホコリが地球に初めて現れ…

<カブール陥落>米大使館の屋上からヘリで脱出する「サイゴン陥落」再び

<バイデンが「ありえない」と言った「サイゴン陥落」がカブールでも起こった。バイデンは厳しい問いに直面することになる> アフガニスタンの反政府勢力タリバンが15日、首都カブールの主要施設を制圧する一方で、アメリカはカブールにある大使館の屋上からヘリコプターで職員を退避させる事態に追い込まれた。 ソーシャルメディアでは、ジョー・バイデン米大統領が先月の記者会見で「起こりえない」と言っていた状況がまさに現実のものになったと話題になっている。 1975年に南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)が陥落してベトナム戦争が終結した際には、アメリカ大使館の屋上から人々がヘリコプターで救出される写真が多くのメディアで報道された。 バイデンは7月8日、アフガニスタンからの米軍の全面撤退について記者会見した際、アメリカ国民があの時のような映像を見ることはないと断言していたのだ。 「タリバンは北ベトナム軍ではない。(両者は)能力という意味で比べものにならない。人々がアフガニスタンのアメリカ大使館の屋上からヘリコプターで運び出されるのを目にする状況にはならないだろう。まったく比較にならない」とバイデンは述べた。 Perfectly Aged Biden in July: “The Taliban is not the North Vietnamese army. They’re not remotely comparable in terms of capability. “There’s going to be no circumstances where you’re going to see people being lifted off the roof of a US Embassy in Afghanistan.” pic.twitter.com/Dw7ghFs8Vz— IndSamachar News (@Indsamachar) August 15, 2021 だが15日、インターネットやメディアではカブールのアメリカ大使館の屋根から職員を退避させるヘリコプターの映像が流れ始めた。ロイター通信やワシントン・ポストを初めとする報道機関は、タリバンがカブール中心部に迫る中、アメリカがヘリコプターを使って職員を緊急避難させていると伝えた。 ■カブールvsサイゴン PHOTO 1: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the #Taliban enter #Kabul from all sides. #Afghanistan (2021)PHOTO 2: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the PAVN & Viet Cong capture of Saigon, Vietnam (1975) pic.twitter.com/YamWmzjOay— Stefan Simanowitz (@StefSimanowitz) August 15, 2021 「米史上最長の戦争」のあっけない幕切れ ツイッターでは、7月の記者会見でバイデンが「そんな状況は起こりえない」と語る動画が拡散された。このバイデンの発言を引用しつつ、1975年のサイゴンと今回のカブール、それぞれの大使館からヘリコプターで職員らが退避する写真を並べた投稿も多くの人にシェアされた。 もともと駐留米軍の完全撤退は、トランプ前政権がタリバンとの間で締結した和平合意に盛り込まれたものだった。にも関わらず、共和党の下院議員らは撤退をめぐってバイデンを強く批判している。ツイッターでも議員らは「これはたった38日前の発言」というキャプションを付けて、バイデンの7月の記者会見の動画をシェアした。 また、バイデンは7月8日の記者会見で、タリバンによる政権奪還は「不可避」なのではとの懸念を一蹴した。アメリカが支援してきたアフガニスタン政府の瓦解は近いとする見方についても否定的で、「私はアフガニスタン軍の能力を信頼している。訓練も装備も、戦争の遂行という意味での能力も向上している」とバイデンは述べた。 アフガニスタンへの派兵はアメリカにとって「史上最も長い戦争」となっていた。米軍は9・11同時多発テロを受け、2001年に同国に侵攻。それからもうすぐ20年になる。 ===== ドナルド・トランプ前大統領はアフガニスタン駐留を続けることは「ばかげており」、アメリカの国益にとってためにならないとつねづね述べていた。そしてマイク・ポンペオ国務長官(当時)の主導の下、トランプ政権はタリバンと交渉を行い、昨年2月に和平合意にこぎ着けた。合意には米軍は今年5月1日までにアフガニスタンから全面撤退することが盛り込まれた。 1月に大統領に就任したバイデンは、この合意に従うことを選択したが、撤退期限は8月末に変更されたが、その前にアフガニスタン政府は瓦解してしまった。 先週、タリバンが急速に支配地域を拡大する中でも、バイデンは米軍の全面撤退は正しいとする姿勢を変えなかった。9.11を計画・実行した国際テロ組織アルカイダの制圧はとっくの昔に果たされた、というわけだ。 「私は決断を後悔していない」とバイデンは述べた。「アフガニスタンの指導者らは力を合わせなければならない。われわれは数多くのアメリカ兵を死や負傷で失った。アフガニスタン政府軍の兵士たちも自分のために、自分たちの国のために戦わなければならない」 アメリカは「破綻国家を建設していた」 アメリカの情報関係者や軍事専門家からは、1カ月以内、長くても3カ月のうちにタリバンがカブールを制圧する可能性があるとの声が上がっていた。だがバイデン政権は、タリバンがこれほど急速に支配地域を拡大するとは思っていなかったようだ。米軍撤退に関してバイデン政権を批判する人は多いが、この決断を擁護する人もまた多い。 米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の政策ディレクター、ベンジャミン・フリードマンは本誌の取材に電子メールでこう答えた。「(現在の状況は)どんなタイミングであれ米軍の撤退に合わせて起こりうる事態だった。それが10年前であっても10年後であってもだ」 また、フリードマンはこうも述べた。「今回の(政権)崩壊のスピードに驚く人は多い。だが、事態の進展に関して当局がどうごまかそうと、われわれは破綻国家を立ち直らせていたのではなく、破綻国家を建設していたのだという事実を隠しおおすことはできないだろう。米軍が撤退する一方で、アフガニスタン軍はほとんどの地域で相手方についたり、単に戦列を離れたりして、まともに(タリバンと)戦わなかった」 ===== ■カブール陥落vsサイゴン陥落 PHOTO 1: US diplomat evacuate US from embassy via helicopter as the #Taliban enter #Kabul from all sides. #Afghanistan (2021)PHOTO 2: US diplomat evacuate US from embassy via

インド映画界には、撮影監督として引っ張りだこの日本人がいる【世界が尊敬する日本人】

<2014年の映画『メアリー・コム』の撮影監督として一躍有名になり、さまざまな作品を撮り続ける中原圭子。ボリウッドで働くとはどういうものなのか、インタビューした> ※8月10日/17日号(8月3日発売)は「世界が尊敬する日本人100」特集。CHAI、猪子寿之、吾峠呼世晴、東信、岩崎明子、ヒカル・ナカムラ、菊野昌宏、阿古智子、小澤マリア……。免疫学者からユーチューバーまで、コロナ禍に負けず輝きを放つ日本の天才・異才・奇才100人を取り上げています。 「映画監督は自分のスタイルを持っていないとい…

4歳児も自分で性を選べるスコットランドの最新ジェンダー教育

<世界に先駆けて公立学校でLBGT問題の授業を義務化したスコットランドが、学校におけるトランスジェンダー学生の対応について革新的な指針を発表した> スコットランドでは4歳の子供でも、親の同意なく学校における呼び名と性別を変更できることになったと、イギリスのテレグラフ紙が報じた。 スコットランド自治政府は新たなLGBTQ+(同性愛など全ての性的少数者)インクルーシブ教育のためのガイドラインを策定し、それを70ページに及ぶ文書にまとめて8月12日に発表した。このガイドラインによれば、教師は性別を変えたい…

クオモの渋々セクハラ辞任、後継の女性知事キャシー・ホークルは「不快で違法」

<ニューヨーク州初の女性知事となったキャシー・ホークルは、「誰であれ法を免れることはできない」と述べた> 複数の女性からセクハラを告発されていた米ニューヨーク州のクオモ知事が8月10日、辞任した。州議会下院はクオモの辞任を受けて弾劾調査を中止したが、収集した資料は捜査当局へ送られる。一方、同州共和党委員会は、セクハラ被害者だけでなくクオモの新型コロナウイルス対応で被害を受けた高齢者施設関係者のためにも調査を続行すると発表。クオモの弾劾が成立すれば、再出馬は不可能になり、年間5万ドルとされる年金も失う…

タリバンが米中の力関係を逆転させる

アフガニスタンにタリバン政権が誕生するのは時間の問題だろう。米軍撤収宣言と同時に中国とタリバンは急接近。一帯一路強化だけでなく、ウイグル問題のため習近平はアルカイーダ復活を認めないだろう。となると、アメリカができなかったことを中国が成し遂げ、中国が世界の趨勢を握ることにつながる。 7月28日、タリバンが天津で王毅外相と会談 7月26日にアメリカのシャーマン国務副長官が訪中し、天津で王毅外相らと会ったことは7月29日のコラム<米中天津会談、中国猛攻に「バイデン・習近平会談」言及できず―それでも習近平と…

ロックダウン違反者を警備員が射殺 過剰暴力と批判高まるフィリピン

<「デルタ株の猛威を防ぐ」という大義のため、また人権がないがしろにされる事態が起きている> 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、市民活動に厳しい規制や制限を課しているフィリピンで、規制に違反して検問を通り過ぎようとした一般市民に対して警備員が発砲、殺害する事件が起きた。 フィリピンの人権団体などが「過剰暴力であり、人権侵害である」として独自の調査に乗り出すとともに、警察当局に対して徹底的な捜査を求める事態となっている。 フィリピンでは警察官による過剰な暴力や殺害などによる人権侵害が以前から深刻化…