「バイアグラ」がアルツハイマー病発症リスクを70%低下させる可能性がある

大規模研究の結果、ED治療薬バイアグラはアルツハイマー病リスクの低下と関連していることが示された
Credit:canva

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バイアグラといえば、広く知られているED(勃起不全)治療薬です。

そのバイアグラが、EDとはまるで無関係の意外な症状に効果を発揮する可能性が明らかとなりました。

米国クリーブランドクリニック(Cleveland Clinic)の研究者が主導した新たな研究は、バイアグラの有効成分シルデナフィルを服用した場合、非使用者と比較してアルツハイマー病の発症リスクが約70%低下していると報告。

これは720万人を超える大規模研究から示されたもので、シルデナフィルがアルツハイマー病(AD)の予防と治療に役立つ有望な薬剤候補である可能性を示すものです。

研究の詳細は、12月6日付で、科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

目次 バイアグラの意外な効能予防法が見つからないアルツハイマー病 バイアグラの意外な効能 アルツハイマー病とバイアグラというのは、一般的な認識ではま…

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参考文献

Harnessing Endophenotypes for Alzheimer’s Disease Drug Repurposing
https://www.lerner.ccf.org/news/details/?Harnessing+Endophenotypes+for+Alzheimer%E2%80%99s+Disease+Drug+Repurposing&76a77dde946648f22990f170b9414613b9b8c440&48b73ec132819095396f4eb49f0c61ddc71c2b58

元論文

Endophenotype-based in silico network medicine discovery combined with insurance record data mining identifies sildenafil as a candidate drug for Alzheimer’s disease
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00138-z

コロナのスパイクを吸着する「感染予防できるガム」を開発!

コロナを予防するシナモン味のガムが開発!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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ガムでウイルスの出入りがブロックできるようです。

米国ペンシルベニア大学で行われた研究によれば、新型コロナウイルスの表面分子に吸着して感染を防護する、植物由来のガム(ACE2ガム)を開発した、とのこと。

新型コロナウイルスの感染は、ウイルスの外側にあるスパイクと呼ばれる部分が人間の細胞の表面にあるタンパク質(ACE2)に結合することではじまります。

しかし新たに開発されたガムはウイルスが結合するタンパク質(ACE2)を大量に含んでおり、ウイルスは人間の細胞に結合する前にガムにくっついてしまうようです。

なお開発されたガムには味もちゃんと付いており、シナモン風味とのこと。

研究結果の詳細は『Molecular Therapy』にて公開されています。

目次 コロナを予防するシナモン味のガムが開発!実は普通のガムでも少し効果があった コロナを予防するシナモン味のガムが開発! 新たなオミクロン株の登場…

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参考文献

Chewing Gum Developed That Could Reduce COVID Transmission – Laced With Protein That “Traps” the SARS-CoV-2 Virus
https://scitechdaily.com/chewing-gum-developed-that-could-reduce-covid-transmission-laced-with-protein-that-traps-the-sars-cov-2-virus/

元論文

Debulking SARS-CoV-2 in saliva using angiotensin converting enzyme 2 in chewing gum to decrease oral virus transmission and infection
https://www.cell.com/molecular-therapy-family/molecular-therapy/fulltext/S1525-0016(21)00579-7?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS1525001621005797%3Fshowall%3Dtrue

微生物インクで「生きた物体」を3Dプリント ブドウ糖液で成長も確認

研究チームは大腸菌から開発した微生物インクで成長できる3Dプリントを実現した
Credit:Duraj-Thatte et al., Nature Communications(2021)

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3Dプリンタは今やなんでも印刷できる印象があり、生物学的な構造を印刷しようとする研究も増えてきています。

今回、米国ノースイースタン大学(Northeastern University)の研究チームが開発したのは、大腸菌の細胞から作った新しいタイプのバイオインクです。

このインクの新しい点は、実際に印刷される物質が生きた細胞であり、ブドウ糖液などに浸けて栄養補給すると、成長するところだといいます。

研究の詳細は、11月23日付でオープンアクセスジャーナル『Nature Communications』に掲載されています。

目次 生きている建材 生きている建材 宇宙へ人類が進出したとき、そこでの暮らしのためには生活するための建物が必要になります。 これを作り出すために、…

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参考文献

WITH THIS NEW TECHNOLOGY, 3D PRINTING COMES TO LIFE … LITERALLY.
https://news.northeastern.edu/2021/11/23/3d-printing-comes-to-life/
This 3D-Printer Uses Ink Made From Microbes to Print Blobs That Are Alive
https://www.sciencealert.com/this-3d-printer-prints-things-that-are-alive

元論文

Programmable microbial ink for 3D printing of living materials produced from genetically engineered protein nanofibers
https://www.nature.com/articles/s41467-021-26791-x

アリは「口移し」で仕事に必要なタンパク質を交換していた

アリは唾液を通して「タンパク質」を交換している
Credit: jp.depositphotos

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フリブール大学(University of Fribourg・スイス)の研究により、オオアリは、口移しで唾液を交換することで、コロニーの社会システムを強化し、円滑にしていることが明らかになりました。

これまでの研究ですでに、ある種のアリが、情報共有のために唾液を交換することが分かっています。

しかし本研究では、単なる情報共有を超えて、採食係・世話係・女王など、それぞれの役割を果たすのに必要な分子を直接分け合っているとのことです。

研究は、11月2日付けで学術誌『eLife』に掲載されています。

目次 アリには自分用と社会用の「2つの胃」がある アリには自分用と社会用の「2つの胃」がある 研究主任で、進化生物学者のアドリア・ルボフ(Adria…

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参考文献

Ant Colonies Can Share a Single ‘Social’ Metabolism, All Thanks to The Way They Kiss
https://www.sciencealert.com/ant-colonies-can-share-a-single-social-metabolism-all-thanks-to-the-way-they-kiss

元論文

Biomarkers in a socially exchanged fluid reflect colony maturity, behavior and distributed metabolism
https://elifesciences.org/articles/74005

2型糖尿病発症の兆候を19年前から予想できる血液検査が登場

血液検査で2型糖尿病を予測できる
Credit:Depositphotos

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現在、世界中の約6%が2型糖尿病で苦しんでおり、食事療法や運動療法、またインスリン注射で生活を大きく調整しています。

彼らの多くが、「糖尿病が発症する前に、その傾向を知りたかった」と考えていることでしょう。

そして最近、スウェーデン・ルンド大学(Lund University)臨床科学部に所属するヤン・デ・マリニス氏ら研究チームは、2型糖尿病の兆候が表れるタンパク質を発見しました。

これにより、発症のリスクを19年前から血液検査で知ることができます。

研究の詳細は、11月10日付の科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

目次 2型糖尿病の発症は予測できるのか?特殊なタンパク質が2型糖尿病のバイオマーカーだと判明 2型糖尿病の発症は予測できるのか? 糖尿病患者の95%…

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参考文献

Biomarker Discovered That Predicts Type 2 Diabetes Many Years Before Diagnosis
https://scitechdaily.com/biomarker-discovered-that-predicts-type-2-diabetes-many-years-before-diagnosis/

元論文

Elevated circulating follistatin associates with an increased risk of type 2 diabetes
https://www.nature.com/articles/s41467-021-26536-w

最強生物クマムシは「体内の水分を抜きタンパク質をゲル化」して無敵になっていた

クマムシの無敵モード「乾眠」を可能にするメカニズムとは?
Credit: ja.wikipedia

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クマムシの驚異的な環境適応力は、「乾眠」という特殊な脱水状態によって発動されます。

しかし、生き物は普通、体内の水分を抜くと生きていけません。

クマムシについても、乾眠を可能にするメカニズムはほとんど何も分かっていませんでした。

自然科学研究機構・生命創成探究センター(ExCELLS・日本)は今回、クマムシの乾燥耐性の仕組みを調査。

その結果、脱水ストレスがかかると、細胞内のタンパク質が集まってゲル状のファイバーを作ることが明らかになりました。

このファイバーが、乾燥した細胞を保護している可能性があるようです。

研究は、11月4日付けで学術誌『Scientific Reports』に掲載されています。

目次 脱水に反応して、タンパク質が集合 脱水に反応して、タンパク質が集合 クマムシは過酷な環境にさらされると、体の水分を抜いて「乾眠」に移行します。…

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参考文献

“地上最強生物”クマムシの乾燥耐性の仕組みの解明に挑む ―水分消失に伴って細胞の中のタンパク質が集まってファイバーをつくることを発見
https://research-er.jp/articles/view/104621

元論文

Desiccation-induced fibrous condensation of CAHS protein from an anhydrobiotic tardigrade
https://www.nature.com/articles/s41598-021-00724-6

「ハゲを逆転させて元に戻せる」可能性を持った遺伝子が見つかる!

幹細胞が脱毛に影響を与える可能性のある新しいメカニズムが発見された
Credit:depositphotos

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多くの男性が加齢に伴って、薄毛や脱毛を経験しています。

これは毛包と呼ばれる毛を作り出す器官内で、細胞を分化させている幹細胞が失われることで発生しているとわかっています。

しかし、なぜ毛包幹細胞が老化によって失われてしまうのか、そのメカニズムは未だによくわかっていないのです。

米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、初めて生きた生物の幹細胞が老化とともにどうなるかを追跡監視し、幹細胞が本来あるべき位置から移動してしまい、移動先に環境に慣れずに死んでしまうことを発見しました。

これは幹細胞を固定する接着剤が失われるためで、チームはこの接着剤を作り出す遺伝子も特定しています。

この遺伝子をもとに戻すことができれば、脱毛現象を逆転させられるかもしれません。

研究の詳細は、10月4日付で科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

目次 毛根が死ぬ理由細胞の接着剤がなくなっていた 毛根が死ぬ理由 私たちの毛は常に死と再生を繰り返しています。 これは毛包と呼ばれる皮膚内の器官(一…

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参考文献

Stem cells lose their ‘glue’ and escape from hair follicle to cause hair loss
https://news.northwestern.edu/stories/2021/10/of-balding-mice-and-men-and-women/
Maintaining stem cell stickiness could be the key to battling baldness
https://newatlas.com/medical/stickiness-stem-cells-hair-loss-baldness-treatment/

元論文

Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00103-w?proof=tr

記憶喪失の原因となるタンパク質を特定! トラウマを消す薬ができる可能性も

記憶喪失薬のターゲットとなるタンパク質を特定!
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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嫌な記憶を忘れられる日がくるかもしれません。

英国ケンブリッジ大学で行われた研究によれば、新たに特定されたタンパク質(シャンク)の存在が、既存の記憶喪失薬の効果を測定する指標になるとのこと。

「記憶の喪失レベル」を客観的に判断する指標が判明したことにより、より効果の高い記憶喪失薬の開発につながると期待されます。

 

研究内容は2021年10月2日から5日までオンラインで開催される第34回ECNP年次会議にて発表されました。

目次 記憶喪失が起こるときシナプスでは特定のタンパク質が分解していた記憶を操作できれば不幸な人はいなくなる 記憶喪失が起こるときシナプスでは特定のタ…

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参考文献

Scientists Find Protein That Indicates Whether Emotional Memories Can Be Changed or Forgotten
https://scitechdaily.com/scientists-find-protein-that-indicates-whether-emotional-memories-can-be-changed-or-forgotten/

元論文

34th ECNP Annual conference
https://www.ecnp.eu/Congress2021/ECNPcongress