満月の16倍の大きさで夜空に広がるブラックホールジェットの噴火

1200万光年離れたケンタウルス座にあるブラックホールのジェット
Credit:Ben McKinley, ICRAR/Curtin and Connor Matherne, Louisiana State University

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地球から約1200万光年離れた楕円銀河「ケンタウルス座A(Centaurus A)」の中心には、太陽の5500万倍という巨大な質量を持つブラックホールが存在しています。

これは地球にもっとも近い活発な活動を続ける超大質量ブラックホールです。

西オーストラリア州の奥地に設置されたマーチソン広視野アレイ(MWA)望遠鏡は、そんな巨大なブラックホールのジェットの全貌を撮影することに成功しました。

このブラックホールの噴火とも呼ぶべき炎は、地球の夜空で満月16個分に相当する範囲に広がっています。

研究の詳細は、2021年12月22日付で科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されています。

目次 地球からもっとも近い活発なブラックホールの噴火 地球からもっとも近い活発なブラックホールの噴火 ブラックホールと一言でいっても、そのサイズや活…

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参考文献

ASTRONOMERS CAPTURE BLACK HOLE ERUPTION SPANNING 16 TIMES THE FULL MOON IN THE SKY
https://www.icrar.org/centaurus/

元論文

Multi-scale feedback and feeding in the closest radio galaxy Centaurus A
https://www.nature.com/articles/s41550-021-01553-3

2021年に話題となった「壮大な宇宙ニュース」ランキング

地球から約3100万光年離れた場所にある渦巻銀河「NGC3627」
Credit:ESO/PHANGS

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2021年もまもなく終わりを迎えようとしています。

地上は新型コロナウイルスでさんざんでしたが、ひとたび地球を離れ宇宙へ目を向けると、そこにはさまざまな新しい発見がありました。

火星探査機パーサヴィアランスが火星に降下し、月面の探査機が謎の物質を見たと報告したり、民間人が宇宙へ行ったり…。

その中で今年世間を騒がせた興味深い宇宙関連の記事をランキング形式で紹介します。

SFまがいの夢にあふれる宇宙の話題で今年を壮大に締めくくりましょう。

目次 2021年話題を読んだ宇宙関連記事 BEST5 2021年話題を読んだ宇宙関連記事 BEST5 第5位 土星が傾いている原因は「衛星タイタン」…

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小さな銀河に不釣り合いな「異様に大きいブラックホール」が見つかる

銀河レオⅠと天の川銀河のサイズ比較画像。30倍近いサイズ差がありながらレオⅠには天の川銀河と同サイズの中心ブラックホールがある。
Credit:ESA/Gaia/DPAC; SDSS

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銀河の中心には、超大質量ブラックホールが存在しています。

そのサイズは、取り巻く銀河のサイズに応じて決まってくるとこれまでは考えられていました。

しかし、テキサス大学オースティン校(The University of Texas at Austin)のマクドナルド天文台の天文学チームは、新たな分析から銀河「しし座Ⅰ(Leo I)」の中心ブラックホールが、銀河のサイズに対して不釣り合いなほど大きいことを明らかにしました。

この新たな分析によるとしし座Iの質量は太陽の約2000万倍であるのに対して、中心ブラックホールの質量は太陽の約330万倍だといいます。

これはしし座Ⅰの30倍もある天の川銀河の中心ブラックホールとほぼ同等の大きさです。

研究の詳細は、11月5日付で科学雑誌The Astrophysical Journal』に掲載されています。

目次 「しし座Ⅰ」の質量測定 「しし座Ⅰ」の質量測定 今回の研究はテキサス大学オースティン校の天文学チームが、同校の所有するマクドナルド天文台の口径…

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参考文献

Texas Astronomers Discover Strangely Massive Black Hole in Milky Way Satellite Galaxy
https://mcdonaldobservatory.org/news/releases/20211201
A Tiny Galaxy Has an Unusually Large Black Hole And Scientists Aren’t Sure Why
https://www.sciencealert.com/a-tiny-satellite-galaxy-of-the-milky-way-has-a-black-hole-nearly-as-big-as-sgr-a

元論文

Dynamical Analysis of the Dark Matter and Central Black Hole Mass in the Dwarf Spheroidal Leo I
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac0c79

ホーキング定理が50年を経て実証される「ブラックホール合体後に表面積増大」

ブラックホールの表面積はエントロピーと一致する
Credit:canva

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宇宙でも非常に特殊な天体ブラックホール。

ブラックホールは観測が難しいですが、理論物理学者たちのインスピレーションの源泉ともなっていて、その性質についてさまざま予想が発表されています。

その中でも有名なものが、ホーキングとベッケンシュタインが予想した「ブラックホールはエントロピーを持っていて、それはブラックホールの表面積に保存されている」というものです。

この理論は2つのブラックホールが合体した場合、その表面積が元の2つのブラックホールの和より大きくなるということを予想していましたが、これを確認することは極めて困難だと考えられていました。

しかし、7月1日に科学雑誌『Physical Review Letters』に発表された新しい研究は、重力波観測の分析からホーキング・ベッケンシュタインの予想が事実であったことを確認したと報告しています。

すでに何をいっているのかわけがわからないという人が大多数でしょうが、今回はこの発見について解説していきます。

 

目次 ブラックホールに物質が飲み込まれると宇宙のエントロピーは下がる?ブラックホールはエントロピーを表面に溜め込んでいる?合体したブラックホールの表…

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参考文献

Hawking Made a Prediction About Black Holes, and Physicists Just Confirmed it(universetoday)
https://www.universetoday.com/151713/hawking-made-a-prediction-about-black-holes-and-physicists-just-confirmed-it/

元論文

Testing the Black-Hole Area Law with GW150914
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.011103