腸の炎症の原因に「マイクロプラスチック」が関連する可能性が示される

マイクロプラスチックの蓄積が腸の炎症を引き起こしている?
Credit: Zehua Yan et al., Environmental Science & Technology(2021)

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マイクロプラスチックは、海洋や土壌、大気のみならず、食品や飲料にも混入しているため、もはや摂取は避けられません。

私たちは生まれた瞬間から、いや、生まれる前からすでにプラスチックの脅威にさらされていますが、それが健康にいかなる影響を与えているかはまだ不明瞭です。

しかしこのほど、南京大学(Nanjing University・中国)の研究により、人体へのマイクロプラスチックの蓄積が、消化器系に炎症を引き起こしている可能性が示唆されました。

特に、炎症性腸疾患(IBD)を患っている人ほど、便のなかに高濃度のマイクロプラスチックが検出されたとのこと。

研究は、12月22日付けで学術誌『Environmental Science & Technology』に掲載されています。

目次 IBD患者ほど、マイクロプラスチックの混入率が高かった IBD患者ほど、マイクロプラスチックの混入率が高かった 研究チームは、健常者と炎症性腸…

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参考文献

Study Finds Alarming Levels of Microplastics in The Feces of People With IBD
https://www.sciencealert.com/inflammatory-bowel-disease-feces-found-with-alarming-levels-of-microplastics
People with IBD have more microplastics in their feces, study says
https://medicalxpress.com/news/2021-12-people-ibd-microplastics-feces.html

元論文

Analysis of Microplastics in Human Feces Reveals a Correlation between Fecal Microplastics and Inflammatory Bowel Disease Status
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.1c03924

薬指が長い女性は「筋力が強い」という研究結果

指の長さで、女性の力強さがわかる
Credit: jp.depositphotos

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「指の長さ」は、驚くほど多くのことを知らせてくれます。

たとえば、今年2月に発表されたノルウェーの研究では、人差し指が長いと女性的な食事を、薬指が長いと男性的な食事を好むことが示されました。

そして今回、オーストリア・ウィーン大学(University of Vienna)の研究により、また新たな事実が判明しています。

2D:4D比(後述します)および筋力を調べた結果、人差し指より薬指の方が長い女性は、そうでない女性に比べ、握力が強いことが分かりました。

これは、出生前に母親の胎内で、テストステロンへの曝露率が高かったことが一因と考えられています。

研究は、12月8日付けで学術誌『Proceedings of the Royal Society B』に掲載されました。

目次 薬指が長い女性は「力が強い」 薬指が長い女性は「力が強い」 2D:4D比とは、人差し指と薬指の長さの比率を示すもので、DはDigit(指)を、…

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参考文献

Women with an index finger shorter than their ring finger may be STRONGER, study claims
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10284421/Women-index-finger-shorter-ring-finger-STRONGER-study-claims.html

元論文

Handgrip strength and 2D : 4D in women: homogeneous samples challenge the (apparent) gender paradox
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2021.2328

人は短時間で追加されたロボット指を使ってピアノが演奏できると判明

11本の指でピアノを演奏する
Credit:Faisal Lab(Youtube)_Playing the Piano with a Robotic 3rd Thumb: Assessing Constraints of Human Augmentation(2021)

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私たちは膨大な作業に追われているとき、「猫の手でも借りたい」と感じます。

そしてピアノ演奏はある意味忙しく、そして膨大な作業に追われた状態だと言えるでしょう。

10本の指をメロディに合わせて遅れずに動かさなければいけないからです。

では、もう1本指を借りて上手に演奏することはできるでしょうか?

イギリスの大学インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)生物工学科に所属するアルド・ファイサル氏ら研究チームは、人が第3の親指を追加しても巧みにピアノ演奏できることを示しました

研究の詳細は、11月1日付の科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次 第3の親指を追加してピアノ演奏する11本の指でピアノ演奏するのに大切なのは演奏経験よりも運動神経 第3の親指を追加してピアノ演奏する ロボット…

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参考文献

Test subjects show surprising ability to play piano with a third thumb
https://newatlas.com/wearables/play-piano-third-robotic-thumb/
Pianists learn to play with robotic third thumb in just one hour
https://www.imperial.ac.uk/news/232077/pianists-learn-play-with-robotic-third/

元論文

Playing the piano with a robotic third thumb: assessing constraints of human augmentation
https://www.nature.com/articles/s41598-021-00376-6

生身で宇宙空間に出たとき、人体はどれだけ耐えられるのか?

宇宙空間での人体の反応は?
Credit:Depositphotos

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映画などのフィクションの世界では、宇宙空間に放り出された生身の人間に劇的な変化が訪れます。

急激に膨張して爆発したり、瞬時に凍り付いたりするのです。

これは明らかに「大げさな表現」ですが、人体では同じような効果が控えめに生じています

ここでは、宇宙空間で人体がどうなってしまうのか解説します。

目次 真空では体内の水が沸騰し、人体を膨張させる真空でも人体は爆発しない!一瞬であれば生き残ることが可能!宇宙空間では凍死するまえに窒息と膨張で死ん…

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参考文献

What would happen to the human body in the vacuum of space?
https://www.livescience.com/human-body-no-spacesuit

「指パッチンは人体で最速の動き」と判明!その速さまばたきの20倍

人体で最速の動きは「指パッチン」と判明
Credit: jp.depositphotos

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ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology・米)はこのほど、高速度カメラと力覚センサーを使って、「指パッチン」の速度と加速度を測定し、あまり知られていないスナップの物理的メカニズムを調査。

その結果、指パッチンは、人体にできる動作の中で最速の運動であることが分かりました。

報告によると、指パッチンの最大角速度は7800度毎秒(deg/s)、最大角加速度は160万度毎秒毎秒(deg/s2  )に達すること。

つまり、スナップした中指が描く小さな弧は、わずか1秒で160万度の角度を踏破でき、これはプロ野球選手のピッチングが生み出す加速度の3倍に匹敵する数値です。

研究は、11月17日付けで学術誌『Journal of the Royal Society Interface』に掲載されています。

目次 きっかけは「サノス」指パッチンは人体で最速の運動 きっかけは「サノス」 研究主任で、化学・生体分子工学者のサアド・バムラ(Saad Bhaml…

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参考文献

Scientists find the fastest acceleration in the human body
https://www.livescience.com/thanos-finger-finger-snap-fastest-acceleration-human-body
Snapping your fingers is a move worthy of a professional athlete
https://www.popsci.com/science/finger-snapping-physics/

元論文

The ultrafast snap of a finger is mediated by skin friction
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsif.2021.0672

栄養をたくさん取ると成長が促進されるメカニズムは脳にあった!

100年前より背が高く思春期が早くなった理由を解明! 栄養と成長をつなげるメカニズム
Credit:Canva . ナゾロジー編集部

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栄養と成長をリンクさせる仕組みが解明されました。

英国ケンブリッジ大学で行われた研究によれば、栄養を検知して子供の成長と思春期入りのタイミングを調節する遺伝子を発見した、とのこと。

この遺伝子に異常があると、両親が高身長で十分な栄養をとっている子供でも、背は低くなり、思春期入りも遅くなってしまうとのこと。

研究内容の詳細は11月3日に『Nature』に公開されています。

目次 100年前より背が高く思春期が早くなった理由ダイエットで性欲がなくなる理由も同じ遺伝子のせいかもしれない 100年前より背が高く思春期が早くな…

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参考文献

Protein in the brain uses energy status to influence maturation, body size, new research shows
https://news.umich.edu/protein-in-the-brain-uses-energy-status-to-influence-maturation-body-size-new-research-shows/
Scientists have discovered the receptor in the human brain that is responsible for people growing taller and reaching puberty earlier than ever
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10162351/Scientists-brain-receptor-responsible-people-growing-taller-reaching-puberty-earlier.html?ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490&ito=1490

元論文

MC3R links nutritional state to childhood growth and the timing of puberty
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04088-9

トゲマウスに哺乳類で初となる「腎臓再生」の能力を発見

トゲマウスに哺乳類で初となる「再生能力」を発見
Credit: ja.wikipedia

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魚類や爬虫類、両生類には、傷ついた体の再生能力を持つものがいます。

その一方で、ヒトを含む哺乳類は、残念ながら、失われた部位の再生を得意とはしていません。

しかしこのほど、ワシントン大学(University of Washington・米)の研究チームは、トゲマウスというげっ歯類に、腎臓組織を再生する力があることを発見しました。

人為的にダメージを与えた腎臓の構造および機能が再生しただけでなく、腎不全の原因ともなる傷跡も残らなかったとのこと。

こうした臓器の再生能力が哺乳類に見つかるのは初であり、人体の再生医療にも役立つと考えられています。

研究は、11月3日付けで学術誌『iScience』に掲載されました。

目次 損傷から2週間で、腎臓が完全再生「心臓」の再生にも適用できる? 損傷から2週間で、腎臓が完全再生 トゲマウス(Spiny mouse)とは、ネ…

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参考文献

These adorable mice can regenerate their kidneys without scarring
https://www.zmescience.com/science/biology/these-adorable-mice-can-regenerate-their-kidneys-without-scarring/
Spiny Mice Appear to Regenerate Damaged Kidneys
https://www.the-scientist.com/news-opinion/spiny-mice-appear-to-regenerate-damaged-kidneys-69375

元論文

Spiny mice activate unique transcriptional programs after severe kidney injury regenerating organ function without fibrosis
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(21)01238-4?utm_source=EA

「鍼治療のツボの正体」を解剖学的に示すニューロンが発見される

鍼治療の治療メカニズムは科学的にはまったく根拠がわかっていない
Credit:canva

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鍼治療とは、炎症に関連した慢性的な痛みや、その他健康上のさまざまな問題を改善させる数千年も続く中国の伝統医療技術です。

現在はどこ国にも鍼治療の診療所があり、非常に一般的な医療として浸透しているイメージもあります。

しかし、この治療法には科学的根拠がまるでなく、その治療メカニズムもよくわかっていません

ハーバード大学医学部の神経科学の研究チームは、そんな鍼治療において、電気鍼を使った場合に抗炎症反応を引き起こす神経ニューロンを発見したと報告しています。

果たしてこの発見は、謎多き鍼治療のメカニズムを解明する神経解剖学的な根拠となりうるのでしょうか?

この研究の詳細は、10月13日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次 科学的根拠がない? 鍼治療の謎鍼の効能は科学的に説明できるのか?疑惑の多い鍼治療研究 科学的根拠がない? 鍼治療の謎 伝説によると、鍼治療の始…

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参考文献

Exploring the Science of Acupuncture
https://hms.harvard.edu/news/exploring-science-acupuncture
代替医療解剖 (新潮文庫)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01N2WEPWB/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=nazology-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B01N2WEPWB&linkId=f554d0af8b17fe56d869e606346f5719

元論文

A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal–adrenal axis
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04001-4

自動運転を応用した視覚障がい者用「ハイテク白杖」が開発される

自動運転技術を応用した視覚障がい者用の「拡張杖」
Credit:Andrew Brodhead(Stanford University)_Stanford Researchers Build $400 Self-Navigating Smart Cane(2021)

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視覚障がい者は白杖(はくじょう)と呼ばれる杖を使って、周囲の安全を確認しながら歩行します。

そして近年、白杖に電子的な機能を追加したスマート杖に注目が集まっています。

そんな中、アメリカ・スタンフォード大学(Stanford University)機械工学科に所属するパトリック・スレイド氏ら研究チームは、自動運転の技術を応用した新しいスマート杖を開発しました。

この杖は周囲の状況を判断し、使用者を安全な歩行ルートへ導いてくれます。

研究の詳細は、10月13日付の科学誌『Science Robotics』に掲載されました。

目次 視覚障がい者に情報を与えるハイテクな白杖拡張杖の自動運転システムが最善のルートに導いてくれる 視覚障がい者に情報を与えるハイテクな白杖 白杖は…

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参考文献

This $400 Cane Uses Autonomous Vehicle Tech to Help Guide The Visually Impaired
https://www.sciencealert.com/this-400-cane-uses-autonomous-vehicle-tech-to-help-guide-the-visually-impaired
Stanford Researchers Build $400 Self-Navigating Smart Cane
https://hai.stanford.edu/news/stanford-researchers-build-400-self-navigating-smart-cane

元論文

Multimodal sensing and intuitive steering assistance improve navigation and mobility for people with impaired vision
https://www.science.org/doi/10.1126/scirobotics.abg6594