人工磁場でテラフォーミングされた火星を守るとんでもない計画を発表

太陽風と火星磁気のアーティストイメージ
Credit:NASA/GSFC/Greg Shirah and Ernie Wright and Walt Feimer and Michael Lentz and Chris Smith

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映画でもアニメでもネタにされるように、火星には非常に地球に近い部分があり、現在もっともテラフォーミングの可能性を持つ惑星です。

ただ、当然のことながら、現在の火星には地球と異なり大きく不足しているものがあります。

それが磁場の存在です。

火星はかつて地球同様に水を含んだ豊富な大気を持っていましたが、強力な磁場がないためにそれはどんどん吹き飛ばされてしまいました。

そこで火星を人工的な磁場で保護する研究が進められていますが、今回オックスフォード大学の研究チームが発表したのは、火星の月フォボスを利用して火星の周りに磁気のリングを形成させるという、かなりとんでもない計画です。

研究の詳細は、11月12日付でプレプリントサーバー『arXiv』に発表されています。

目次 火星テラフォーミングの障害となる太陽風フォボスを使って火星の周りに荷電粒子のリングを作る 火星テラフォーミングの障害となる太陽風 太陽風は太陽…

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参考文献

An Absolutely Bonkers Plan to Give Mars an Artificial Magnetosphere
https://www.universetoday.com/153368/an-absolutely-bonkers-plan-to-give-mars-an-artificial-magnetosphere/

元論文

How to create an artificial magnetosphere for Mars
https://arxiv.org/abs/2111.06887

車に引かれても潰れない「スーパーゼリー」が開発される

ケンブリッジ大学が開発したスーパーゼリーは80%以上が水分であるのに高い圧力耐性を持っている
Credit:University of Cambridge/Zehuan Huang

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ゼリーのような物質は80%が水で構成されていて、圧力に弱く、押しつぶすと簡単に崩れてしまいます。

しかし、英国ケンブリッジ大学の研究チームは、柔らかいゼリーのようでありながら、最大100MPaの圧力にも耐えられるという、非常に不思議な素材「スーパーゼリー(Super jelly’)」を開発しました。

チームはこのゼリーを車で何度も何度も轢き潰す実験動画を公開していますが、ゼリーは驚いたことに無傷です。

研究の詳細は、9月25日付で科学雑誌『Nature Materials』に掲載されています。

目次 車が轢いても崩れない強靭なゼリー 車が轢いても崩れない強靭なゼリー チームが公開した動画では、明らかに柔らかそうなゼリー(ヒドロゲル、水を含ん…

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参考文献

‘Super jelly’ can survive being run over by a car
https://www.cam.ac.uk/research/news/super-jelly-can-survive-being-run-over-by-a-car

元論文

Highly compressible glass-like supramolecular polymer networks
https://www.nature.com/articles/s41563-021-01124-x

「原子を透明にする現象」が実験で観測される

原子を極端に冷やしたり押しつぶしたりすると、光を散乱させる能力が抑制されることが新しい研究で確認された
Credit: Christine Daniloff, MIT

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通常、私たちは原子にぶつかった光(光子)が散乱し、目に届くことで物質を見ることができます。

ところがMITのある研究者は30年前に、原子を超低温状態で、隙間なく高密度に配置したとき、光子がぶつかったエネルギーを散乱させる余地がなくなるため、原子が透明化するという予想をしていました。

そして今回、MITの研究チームはレーザーを使った超低温技術で実験を行い、実際に原子が光の散乱を38%も低下させるのを確認したと報告しています。

チームの考えでは、完全な絶対零度を実現できた場合には、原子は完全に光を散乱できなくなって見えなくなるといいます。

この研究の詳細は、11月18日付で、科学雑誌『Science』に掲載されています。

目次 満席状態のスタジアム原子の透明化 満席状態のスタジアム 量子力学には「パウリの排他原理」という理論があります。 これは簡単にいうなら、電子には…

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参考文献

How ultracold, superdense atoms become invisible
https://news.mit.edu/2021/atoms-ultracold-scatter-light-1118
MIT Physicists Use Fundamental Atomic Property To Turn Matter Invisible
https://scitechdaily.com/mit-physicists-use-fundamental-atomic-property-to-turn-matter-invisible/

元論文

Pauli blocking of light scattering in degenerate fermions
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abi6153

2万4000年間の気候変動が一目で分かる世界気温地図が作られる

国際宇宙ステーションからみた地平線の眺め
Credit:NASA

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温暖化は現代のキーワードとも言える、人類の抱える大きな課題となっていますが、地球の気候変動は何も今になって始まったことではありません。

地球の気候は長い年月の中でダイナミックに変化しており、温暖化問題を考える際も、これは自然のサイクルであって人類の活動はあんまり関係ないんじゃないか? と考える人たちも多く存在します。

そこで、米国アリゾナ大学が主導した新しい研究は、、氷河期以降の地球の気候を再構築し、過去2万4000年間の地球上の気温変化を200年間隔でマッピングしました

その研究結果は、いかに人間の活動が自然なサイクルの限界を超えて気温を押し上げているかを浮き彫りにしている、と研究者は話します。

研究の詳細は、2021年11月10日付けで科学雑誌『nature』に掲載されています。

目次 地球の気温変化の歴史を再構築する2万4000年間の地球の気温変化を一目で見る 地球の気温変化の歴史を再構築する 今回の研究は、過去2万4000…

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参考文献

Global Temperatures Over Last 24,000 Years Show Today’s Warming ‘Unprecedented’
https://news.arizona.edu/story/global-temperatures-over-last-24000-years-show-todays-warming-unprecedented
See 24,000 years of climate history at a glance
https://www.popsci.com/science/24000-years-of-climate-history-gif/

元論文

Globally resolved surface temperatures since the Last Glacial Maximum
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03984-4
Globally resolved surface temperatures since the Last Glacial Maximum(Earth ArXiv版)
https://eartharxiv.org/repository/view/2219/

液滴同士がくっつかない「新しいライデンフロスト効果」を発見

ライデンフロスト効果で、異なる種類の液滴が弾きあう現象が確認された
Credit:F. Pacheco-Vázquez et al.,PhysRevLett(2021)

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水の沸点を大きく超えたホットプレートに雫を落とすと、雫はすぐに蒸発せずにわずかに宙に浮いたまま維持されることがあります。

これをライデンフロスト効果と呼びます。

メキシコのプエブラ大学(University of Puebla)の研究チームは、この効果が発生しているときに、異なる種類の液滴がぶつかると、合体せずに連続して跳ね返ることを発見

チームはこれを「トリプルライデンフロスト効果(Triple Leidenfrost Effect)」と名付け、どういった条件でそれが起きるかについて、分析して報告を行っています。

研究の詳細は、11月12日付で、科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に掲載されています。

目次 高温の表面で液体が蒸発せずに宙に浮く「ライデンフロスト効果」液滴同士の間でも起きるライデンフロスト効果 高温の表面で液体が蒸発せずに宙に浮く「…

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参考文献

Amazing Video Reveals a New Kind of Leidenfrost Effect We’ve Never Seen Before
https://www.sciencealert.com/we-ve-just-discovered-a-new-kind-of-leidenfrost-effect
Bouncing Droplets Reveal New Leidenfrost Effect
https://physics.aps.org/articles/v14/160

元論文

Triple Leidenfrost Effect: Preventing Coalescence of Drops on a Hot Plate
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.204501

地球の深部でしか作られない新種の鉱物が「ダイヤに封じられた状態」で発見される

新種鉱物「davemaoite」を黒い斑点のように保持したダイヤモンド
Credit: Aaron Celestian, Natural History Museum of Los Angeles County

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新種の生物発見というニュースはときたま耳にしますが、鉱物においても新種の発見がありました。

米国のネバダ大学ラスベガス校(UNLV)の研究チームは、深部地球において形成されるが地上では通常存在しない鉱物が、ダイヤモンド内に閉じ込められた状態で保持されているのを発見しました。

チームはこの新種鉱物を「Davemaoite(デイヴマオアイト)」と名付けて報告し、国際鉱物学連合(IMA)がこれを昨年承認しました。

研究の詳細は、2021年11月11日付けで科学雑誌『nature』に掲載されています。

目次 新種鉱物の発見ダイヤモンドに封印された新種鉱物 新種鉱物の発見 生物と同じ様に「鉱物」でも新種発見は報告されます。 鉱物は、自然界に存在するさ…

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参考文献

Diamond delivers long-sought mineral from the deep Earth
https://www.nature.com/articles/d41586-021-03409-2
鉱物のお話(物性研だより第54巻第2号)
https://www.issp.u-tokyo.ac.jp/maincontents/docs/tayori54-2_Part11.pdf

元論文

Discovery of davemaoite, CaSiO3-perovskite, as a mineral from the lower mantle
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abl8568

がん細胞に「体内を泳いで薬を届ける」形状変形マイクロロボットが登場

マイクロロボットの魚は薬を持って体内を泳ぎがん細胞に遭遇すると自動的に薬を吐き出す
Credit:Chen Xin,et al,American Chemical Society(2021)

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現在の多くのがん治療において、抗がん剤による化学療法が成功を収めています。

しかし、この治療法は、がん細胞以外の正常な細胞まで攻撃してしまうため、大きな副作用が伴います。

この問題を軽減するため、中国の研究チームはがん細胞まで直接薬剤を届けるマイクロロボットの概念実証を行いました

魚やカニなどユニークな形状をしたマイクロロボットは、磁気でがん細胞まで誘導されpHの変化で形状変化して掴んでいた薬剤を放出します。

研究の詳細は、10月19日付でアメリカ化学会の科学雑誌『 ACS Nano』に掲載されています。

目次 がん細胞に直接薬剤をお届けするマイクロロボット がん細胞に直接薬剤をお届けするマイクロロボット 化学治療は多くのがん治療で成功している分野です…

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参考文献

Microrobot fish swims through the body to vomit drugs on cancer
https://newatlas.com/robotics/microrobot-fish-crab-drug-delivery/
Shape-morphing microrobots deliver drugs to cancer cells (video)
https://www.acs.org/content/acs/en/pressroom/presspacs/2021/acs-presspac-november-17-2021/shape-morphing-microrobots-deliver-drugs-to-cancer-cells-video.html

元論文

Environmentally Adaptive Shape-Morphing Microrobots for Localized Cancer Cell Treatment
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.1c06651

心の病が「肉食を放棄させている」可能性が高い

肉の消費はより良いメンタルヘルスと関連している
Credit:depositphotos

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最近は環境的・倫理的動機から、肉食を完全に放棄するよう呼びかける人たちをよく目にするようになりました。

しかし、人間の体は基本的に肉も野菜もバランス良く摂取することを前提に作られています。

特定の食事を故意にやめた場合、健康に対して何らかの影響が出る可能性もあるでしょう。

米サザン・インディアナ大学(USI)による最近の分析では、肉を含まない食事は雑食性の食事よりも高いうつ病や不安レベルと関連していることが示されました。

これは17万人以上の参加者を含む20の研究データから抽出された結果を評価した、最新のメタアナリシス研究です。

しかしこの結果は、肉を食べれば精神状態が改善する、と言っているわけではないようです。

研究の詳細は、2021年10月6日付で科学雑誌『CriticalReviews in Food Science and Nutrition』に掲載されています。

 

 

目次 食事とメンタルヘルスの関係メンタルヘルスが低下したから肉を食べるのをやめた? 食事とメンタルヘルスの関係 「いつもダイエットを実行している人で…

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参考文献

Meat consumption is associated with better mental health, meta-analysis finds
https://www.psypost.org/2021/11/meat-consumption-is-associated-with-better-mental-health-meta-analysis-finds-62107
People who eat meat report lower levels of depression and anxiety than vegans do, a recent analysis suggests
https://www.businessinsider.in/science/news/people-who-eat-meat-report-lower-levels-of-depression-and-anxiety-than-vegans-do-a-recent-analysis-suggests/articleshow/87313935.cms

元論文

Meat and mental health: A meta-analysis of meat consumption, depression, and anxiety
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10408398.2021.1974336

極寒の南極で「空気中の水素をエサにして生きるバクテリア」を発見

南極東部マッケイ氷河のの北にある氷のない砂漠地帯。バクテリアはここから発見された。
Credit:Ian Hogg

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エネルギーとして得るものが何もなく、乾燥して細胞を維持することさえ困難な環境にも数多くのバクテリアが存在しています。

彼らはいったいどうやって生きるためのエネルギーを得て、細胞を維持しているのでしょうか?

南アフリカのプレトリア大学(UP)の研究チームは、東南極の凍土に潜む451種類のバクテリアを調査し、そのほとんどが空気中の水素を燃料とし、副産物として水を生成していることを明らかにしました。

また遺伝子解析から、これらの細菌は10億年前にこのような形態に分岐したこともわかったといいます。

人間が水素をエネルギー源として活用し始めたのはつい最近のことですが、南極に住むバクテリアは10億年前からそれをしていたようです。

研究の詳細は、11月9日付で科学雑誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されています。

目次 極限の環境で生きる微生物霞を食べて生きる微生物たち水がない環境でも生命が生存できる可能性 極限の環境で生きる微生物 今回調査が行われたのは、東…

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参考文献

Antarctic bacteria live on air and make their own water using hydrogen as fuel
https://theconversation.com/antarctic-bacteria-live-on-air-and-make-their-own-water-using-hydrogen-as-fuel-171808

元論文

Multiple energy sources and metabolic strategies sustain microbial diversity in Antarctic desert soils
https://www.pnas.org/content/118/45/e2025322118

「電磁ビーム」で敵を妨害する電子戦システムが公開される

イスラエルの国営防衛請負業者IAIの電子戦システム「Scorpius system」
Credit:IAI

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現代の戦争では、安価なドローン兵器の躍進のため、高額なミサイルを使った迎撃線はコスト的に合理的とはいえなくなって来ています。

イスラエルの国防も請け負っている「イスラエル航空宇宙産業(IAI)」は、さまざまな脅威を同時に検出して、妨害できる新しい電子戦システムを発表しました。

「Scorpius(スコーピウス)」と呼ばれる一連のシステムは、ミサイルなどで脅威を迎撃するのではなく、遠距離から電磁スペクトルに干渉する収束ビームを送ることで、敵のレーダー、センサー、ナビゲーション、データ通信など、さまざまなシステム動作を妨害します。

これは低コストの優れた防衛システムになると考えられます。

目次 非対称戦争で膨れる軍事費実弾を使わない防衛 非対称戦争で膨れる軍事費 現代の戦争では、戦う相手同士の軍事力の規模や、用いる戦術・戦略が大きく異…

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参考文献

IAI unveils new defensive electronic warfare systems
https://www.jpost.com/israel-news/iai-unveils-new-defensive-electronic-warfare-systems-684703
Israel shows off new electronic warfare system that uses BEAMS instead of missiles or bullets to go after enemy threats
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10192661/Israel-showing-new-electronic-warfare-uses-beams-instead-missiles-bullets.html?ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490&ito=1490
New Saudi Missile Order Reveals The High Cost Of Asymmetric Drone War
https://www.forbes.com/sites/davidhambling/2021/11/11/new-missile-order-reveals-true-cost-of-assymnetric-drone-war/?sh=3eab1fdf16f2