ドラマと非ドラマの間で/『ニューヨーカー』を読む:#22「HELLO, GOODBYE」 

トルーマン・カポーティーやJD・サリンジャーなど名文筆家たちが寄稿し、英語圏で小説を書く者ならば誰もが憧れる雑誌『ニューヨーカー』。そこに描かれる作品には、時代の空気を敏感に感じ、翻弄され、あるいは抗いながら生きる人々の姿が至極の筆致で刻まれている。『ニューヨーカー』を読むことは、すなわち時代の変化をいち早く「体感」することでもあるのだ。ニューヨーク在住の作家・新元良一が今月選ぶのは、人生におけるドラマチックな出来事と、ある種の凡庸とも感じられる非ド…

人智を超えた素材開発とその効率化の先にある未来とは:「WIRED CONFERENCE 2021」ウミトロン・藤原謙 × パナソニック テクノロジー本部・横山智康

「リジェネラティヴな未来」を思索すべく、計15時間、18に及ぶ多彩なセッションが3日間にわたって繰り広げられた「WIRED CONFERENCE 2021」。海洋環境と漁業、社会を変革する新素材──。それぞれの領域においてマテリアルと情報を重ね合わせる藤原謙(ウミトロン Co-Founder/CEO)と横山智康(パナソニック テクノロジー本部 マテリアル応用技術センター 主任研究員)が語るセッション「マテリアルと情報が重なり合う未来」をレポートする。…

データ販売から「地球モニタリング」のプラットフォーマーへ:フィンランドの人工衛星企業が描く次世代の衛星ビジネス

日照条件に左右されない地球観測衛星として注目される合成開口レーダー(SAR)衛星。民間でこの分野をリードしているのが、フィンランド発のICEYE(アイサイ)だ。そんな同社は、データ販売を主な業務としていたこれまでの衛星ヴェンチャーのあり方を見直し、プラットフォーマーへの進化を遂げようとしている。

パーパスを起点にNatureは、いかなる未来を描くのか

企業の活動が、人間中心から地球中心へとシフトしていく2020年代。それは利益至上主義から、環境、サステイナビリティを配慮した経営への変革が求められていると言い換えられる。気候変動の危機が差し迫るなか、クリーンテックのスタートアップNatureは、いかなるパーパスをもって社会を変革しようとしているのか。ビジネスデザイナーの岩嵜博論とNature代表の塩出晴海が語り合う。

「市民のための市役所」が照らし出す民主主義の可能性:映画『ボストン市庁舎』フレデリック・ワイズマン監督インタヴュー

2016年のアカデミー賞で名誉賞を受賞するなど、ドキュメンタリー映画の巨匠として知られるフレデリック・ワイズマン監督。彼が最新作の舞台に選んだのは、生まれ故郷マサチューセッツ州のボストン市庁舎。多様な人種、文化、価値観が共存する大都市で、“市民のための市役所”として奮闘するボストン市庁舎の挑戦はいかなる都市の未来を提示するのか──。作家・コラムニストの新元良一を前に、ワイズマン監督が語り出す。

もっと没入感のあるオンラインイヴェントを:「Mingle PARTY」が切り拓くイマーシヴ3DCG体験

タイル状に並ぶ顔に、動きのない退屈な舞台設定、いまやすっかりおなじみになったオンライン・トークイヴェントにもそろそろイノヴェイションが必要だ──少なくとも、クリエイティヴ集団PARTYはそう考えている。パーソナルモビリティと「CG背景同期制御」を組み合わせることで、これまでにないイマーシヴなオンライン視聴体験を実現した「Mingle PARTY」が世界で初めて実装されたのは、そう、「WIRED CONFERENCE 2021」のあの舞台だ。

人類最後の定住地「セーシェル」の近代史を写した、ある日本人の物語:松田法子連載・『人と地球の共構築に向けて』

人類が棲み着いて250年しか経っていないセーシェル諸島には、その歴史を記録した大橋申廣という日本人写真師が活動していた。京都府立大学准教授の松田法子による連載『人と地球の共構築に向けて:汀のトラヴェローグ』第2回では、そんな大橋の軌跡をたどり、セーシェルという地の成り立ちから神話の類型までを横断しながら、土地と人の歴史をひも解いていく。

マルチスピーシーズ人類学が暗示する「この先デザインが思考していくべき領域」とは?:奥野克巳×ソニーデザイン

多岐にわたる領域でのデザイン活動が今後ますます求められているソニーグループ クリエイティブセンター。これからも先進的で、斬新で、アメイジングなアウトプットを出し続けていくべくSci-Fiプロトタイピングを導入した彼らは、さらに考察を進め、「4つのキーワード」を導き出した。そのひとつである「マルチスピーシーズ」への理解を深めるべく、マルチスピーシーズ人類学を専門にする文化人類学者・奥野克巳のもとを訪ねた。

信頼のネットワークから生まれる新たなネイバーフッドへの道標:有山俊朗(富士通ソーシャルデザイン事業本部長)×山崎亮

オンラインイヴェント「WIRED CONFERENCE 2021 FUTURE:re-generative」の初日、「人のつながりから考える、CITYの『これまで』と『これから』」と題したセッションでは、富士通ソーシャルデザイン事業本部長有山俊朗と、コミュニティデザイナーの山崎亮が登壇した。コロナ禍によって変化した「つながり」を起点にいかに信頼関係を築いていくか、多くのヒントが導き出された本セッションの全貌をレポートする。

アート界の欺瞞とダイヴァーシティ:『皮膚を売った男』カウテール・ベン・ハニア監督インタヴュー

物議を醸し出す作品を世に送り出してきた現代アーティスト、ヴィル・デルボアの「TIM」をモチーフにした『皮膚を売った男』は、「自由」と引き換えに「芸術作品」となったシリア難民が主人公の挑発的な傑作だ。“悪魔の取引”で手に入れた「自由」は、果たして幸福へのパスポートなのか。チュニジア出身の気鋭の女性監督カウテール・ベン・ハニアが、野心作で描き出すアート界の欺瞞とダイヴァーシティ。