都市という第三の森をつくる:SZ Newsletter VOL.117[CLIMATE CRISIS]

今後は都市化が加速するという予想が一方にあり、他方で急激な気候変動のドライヴァーとして都市がやり玉に上がる時代に、都市と自然の二項対立としてではなく、アウフヘーベンする視点をいかに獲得できるだろうか? 生命が35億年のあいだ地球環境を改変することで生態系を拡張してきたように、都市を「第三の森」として捉える視座から今週のSZメンバーシップのテーマ「CLIMATE CRISIS」を考察する編集長からのニュースレター。

深刻化する都市のヒートアイランド現象への対策は、副作用とのトレードオフとなる

都市部は周辺地域に比べて約10℃も気温が高くなることがあるが、緑地や、日光を反射する素材を使った舗装によって、都市生活をより凌ぎやすいものにすることは可能だ。だが意図しない副作用もある。クール素材を建物や舗装に使うことで海風を弱めたり、歩行者を熱したりする他、地域の緑化がグリーン・ジェントリフィケーションを引き起こすこともある。都市熱に関する科学的研究はまだ始まったばかりだ。

高速道路の新設は後回し? 「環境に優しい道路網」の構築を優先させる米国政府の“秘策”

1兆ドル(約114兆円)を超える超党派のインフラ投資計画法案が可決された米国。最終的に使途を決定する権限をもつのは州政府と地方政府だが、その予算を「環境に優しい交通インフラ」の構築に優先的に使うよう促す“秘策”が米国政府にはある。高速道路の新設や延伸よりも先に、既存の路線網の修繕を優先するよう促す取り組みだ。

森林を再生するリジェネラティヴな「建築」を目指して:都市から通う「SANU 2nd Home」が実現する、自然との共生

「都市で忙しい日々を過ごす人々にとって、自然を感じることは難しい」──。自然との共生を掲げるライフスタイルブランドのSANUが、「都市から自然のなかに繰り返し通う」生活を実現するサーヴィス「SANU 2nd Home」をリリースした。SANUファウンダーの本間貴裕、CEOの福島弦、建築設計を担当するADX代表の安齋好太郎が、50年後を生きる世代に豊かな自然を残す循環型建築のあり方について語った。

「食の主権」はリジェネラティヴなアプローチで再興する──サラ・ロヴェルシ:フードイノヴェイションの未来像(第8回)

自分たちが食べるものを選び、生産・流通するといった「食の主権」は、食の工業化に伴って人々が手放していった権利だ。しかし、一人ひとりの行動が地球環境にインパクトを与える時代に、再度この権利を見直す動きがある。食のエコシステムをつくるあらゆるコミュニティを巻き込むかたちでイノヴェイションを促すFuture Food Institute創設者のサラ・ロヴェルシをゲストに迎えた人気ウェビナーシリーズ「フードイノヴェイションの未来像」第8回をレポート。

「SFプロトタイピング」で描く2070年の鎌倉と、「将来世代への責任」:「World Marketing Forum 〜人間性のためのテクノロジー Marketing5.0〜」レポート

都市開発は長い時間かけて進められるものの、そのエリアで数十年後に暮らす「将来世代」の意思は開発に反映されない。だが、長期的思考をもって「都市の未来」を想像することで、開発における将来世代への責任を育めるのではないか──。WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所とSF作家の吉上亮は「鎌倉市スーパーシティ構想」が見据えるその先の「2070年」をターゲットに、SFプロトタイピングを実施した。本構想にかかわるメンバーも交えたトークセッションの様子をレポ…

人類最後の定住地「セーシェル」の近代史を写した、ある日本人の物語:松田法子連載・『人と地球の共構築に向けて』

人類が棲み着いて250年しか経っていないセーシェル諸島には、その歴史を記録した大橋申廣という日本人写真師が活動していた。京都府立大学准教授の松田法子による連載『人と地球の共構築に向けて:汀のトラヴェローグ』第2回では、そんな大橋の軌跡をたどり、セーシェルという地の成り立ちから神話の類型までを横断しながら、土地と人の歴史をひも解いていく。

「音楽」はこれからの時代に“旅のディスティネーション”となるか?:Placy鈴木綜真による連載『Cultivating The CityOS』

音楽フェスティヴァルの世界的増加やミュージシャンの聖地巡礼を背景に、音楽を起点にした観光「ミュージックツーリズム」が注目されている。コンサルティングファーム「Sound Diplomacy」へのインタヴューや、第一次世界大戦後の旅ができない時代の「仮想旅行」を参照しながら、Placy鈴木綜真がパンデミック後の「音楽」と「場所」の関係性をひも解く。

都市を豊かにする/文化を育むための観光・ホテルの未来像 ゲスト:扇沢友樹/日下部淑世(株式会社めい共同創業者)[音声配信]

オーヴァーツーリズムに苦しんでいたアムステルダムやヴェネツィア、京都などの都市は、パンデミックによりその姿を大きく変えようとしている。はたして持続可能な“観光“都市を目指すホテルの在り方とは何か──。2019年、若手現代アーティストが住むコミュニティ型アートホテル「KAGANHOTEL-河岸ホテル-」を京都にオープンさせた扇沢友樹、日下部淑世(株式会社めい代表)のふたりに、都市を豊かに育む観光・ホテルの未来を訊く。