魚たちはホホジロザメのことを皮膚掃除のブラシとして使っていた!

メキシコのグアダルーペ島で研究者が撮影したホオジロザメに体を擦り付けるマアジの群れ
Credit:Jesus Erick Higuera Rivas

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ホホジロザメは恐ろしい海の捕食者のイメージがあります。

しかし、そんなサメの周りには多くの小さな魚たちが集まって来ます。

これまで、それはサメと共生関係にある魚たちと言われていましたが、実はサメの餌になるマアジなどの魚たちも擦り寄っていることが確認されたのです。

マイアミ大学(UM)の研究チームは、サメの保護・研究を行う中で捕食対象の魚たちがサメに擦り寄り体を擦り付ける行動を数多く確認しました

この行動の理由は正確には判明していませんが、研究者たちはサメのヤスリのような肌を魚たちが自分の肌の掃除に利用していると推測しています。

研究の詳細は、10月28日付で科学雑誌『Ecology, The Scientific Naturalist』オンライン版に掲載されています。

目次 サメに擦り寄る魚たちサメは魚たちにとって海のブラシだった サメに擦り寄る魚たち 獰猛な海の捕食者であるサメは、他の魚たちの嫌われ者と考えがちで…

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参考文献

Study finds fish rubbing up against their predators — sharks
https://news.miami.edu/rsmas/stories/2021/11/study-finds-fish-rubbing-up-against-their-predators-sharks.html

元論文

Sharks as exfoliators: widespread chafing between marine organisms suggests an unexplored ecological role
https://esajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ecy.3570

人間サイズのアンモナイト「パラプゾシア」が巨大進化した理由とは?

最大のアンモナイト「パラプゾシア」の標本。画像のものは直径1.8mに達する
Credit:Wikipedia

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アンモナイトはすでに絶滅している種ですが、多くの人がすぐ頭に思い浮かべられるほど有名な巻き貝です。

そのアンモナイトの一種、白亜紀後期に登場した「パラプゾシア(Parapuzosia)」は、発見された化石の直径が2m近くもある非常に巨大化した種です。

これまでパラプゾシアが、どのように巨大な進化を遂げたのかはわかっていませんでしたが、ドイツのハイデルベルク大学などの国際研究チームは、さまざまなサイズの154のアンモナイト化石から、進化の様子を明らかにしています。

これまでパラプゾシアの巨大化の原因は気候変動だと考えられてきました。

しかし今回の研究は、巨大化の時期が当時の気候変動とうまく一致していない可能性を示しています。では、なにがパラプゾシアを巨大化させたのでしょうか?

研究の詳細は、11月10日付で、科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されています。

目次 世界最大のアンモナイト巨大化した進化の流れを発見! 世界最大のアンモナイト アンモナイトは、現在のオウムガイの仲間とされる巨大な殻を持った軟体…

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参考文献

We May Finally Understand Why These Gargantuan Mollusks Got So Huge
https://www.sciencealert.com/here-s-the-possible-reason-why-the-world-s-largest-ammonite-got-so-danged-huge
Human-size ammonites swam the Atlantic Ocean 80 million years ago
https://www.livescience.com/largest-ammonites-evolved-80-million-years-ago
Shelled krakens of the Mesozoic deep
https://eartharchives.org/articles/shelled-krakens-of-the-mesozoic-deep/index.html
Parapuzosia
https://oriasokfoldjen.hu/parapuzosia/

元論文

Ontogeny, evolution and palaeogeographic distribution of the world’s largest ammonite Parapuzosia (P.) seppenradensis (Landois, 1895)
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0258510

大腸菌で火星脱出のロケット燃料を作る技術が登場

火星基地のアーティストイメージ
Credit:NASA/Georgia Tech

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現在火星で活躍している探査機は、基本的に片道切符で地球へ帰還することは想定されていません。

しかし、今後は人間を火星に送ることも計画されており、火星から地球へ帰ってくるための技術は不可欠なものとなります。

ここでネックとなるのが火星から脱出するためのロケット燃料をどうやって確保するかです。

そこで米国ジョージア工科大学(Georgia Tech)の新しい研究は、大腸菌を利用して火星でロケット燃料を生成させる新しい方法を提案しています。

この方法で生成される 「2,3-ブタンジオール (2,3-BDO)」は、地球大気圏の脱出にはパワーが足りない燃料ですが、重力が弱い火星からの脱出には十分に活躍できるとのこと。

研究の詳細は、10月25日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次 火星発ー地球行の帰還便はとても割高大腸菌が火星で燃料を作る 火星発ー地球行の帰還便はとても割高 現在火星に探査機がいくつも送り込まれていますが…

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参考文献

Making Martian Rocket BioFuel on Mars
https://news.gatech.edu/news/2021/10/25/making-martian-rocket-biofuel-mars

元論文

Designing the bioproduction of Martian rocket propellant via a biotechnology-enabled in situ resource utilization strategy
https://www.nature.com/articles/s41467-021-26393-7

Blu-rayの1万倍も保存できて無限の寿命を持つ「5次元光ストレージ」が登場

2013年に実証されて以来研究が続けられている5D光ストレージ。500TBの容量を持つという。
Credit:University of Southampton

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かつては活躍したCDやDVD、Blu-rayといった記憶媒体ですが、現在では使用頻度はかなり減っている印象があります。

その原因は1つにネット回線が飛躍的に向上したこともありますが、基本的なデータ容量が大きくなりすぎたこと、そして何より記憶媒体の寿命が短いことがあげられます。

一般的なCD、DVDの寿命はせいぜいが十数年程度とされています。

しかし、英国サウサンプトン大学では、フェムト秒レーザーというものを使ったBlu-rayの1万倍も密度の高い新しい記憶媒体を研究しています。

定期的にその成果が更新されているこの記憶媒体は、「5次元光ストレージ」と呼ばれていて、ディスク容量は約500TB、常温での寿命は実質無限だとされています。

この研究の詳細は、10月28日付で科学雑誌『OPTICA』に掲載されています。

目次 5次元光ストレージとは? 5次元光ストレージとは? 現在ほとんどのデータはハードディスクや、ネット上のサーバーに保存されています。 しかし、ハ…

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参考文献

5D data storage technology offers 10,000 times the density of Blu-ray
https://newatlas.com/electronics/5d-data-storage-technology-density-blu-ray/

元論文

High speed ultrafast laser anisotropic nanostructuring by energy deposition control via near-field enhancement
https://www.osapublishing.org/optica/fulltext.cfm?uri=optica-8-11-1365&id=462661

落雷死は骨に法医学の証拠となる独特のパターンを残す

落雷で死亡した痕跡は骨にの深くに残る
Credit:canva

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落雷で死ぬというのはかなりまれな出来事という印象がありますが、実際世界では年間2万4000人以上の人が落雷で命を落としています。

もし誰も目撃者のいない遠隔地で、落雷による死亡があった場合、その死体は司法解剖されることになるでしょう。

しかし、その死体が山奥で白骨化していた場合、法医学は落雷が犯人だったと特定することができるのでしょうか?

南アフリカ共和国のウィットウォーターズランド大学(University of the Witwatersrand:ウィット大学)、英国ノーサンブリア大学(Northumbria University)の法医学研究グループは、落雷で死亡した際に、骨細胞に放射状の跡が残ることを発見したと報告しています。

この成果は、事故死と殺人事件を区別し、また落雷死の正確な件数を割り出すために役立ちます。

研究の詳細は、11月3日付で科学雑誌『Forensic Sc​​ience International:Synergy』に掲載されています。

目次 死体は語る落雷が刻む骨の損傷 死体は語る 科学捜査を主軸としたミステリードラマは、日本、海外を問わず人気ジャンルの1つです。 こうした作品がき…

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参考文献

Harnessing Thor’s hammer
https://www.wits.ac.za/news/latest-news/research-news/2021/2021-11/harnessing-thors-hammer.html
Lightning Strikes Carve a Deadly Signature Deep Inside The Bones, Scientists Discover
https://www.sciencealert.com/lightning-strikes-carve-a-deadly-signature-deep-inside-the-bones-scientists-discover

元論文

Harnessing Thor’s Hammer: Experimentally induced lightning trauma to human bone by high impulse current
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2589871X21000760?via%3Dihub

「ハゲを逆転させて元に戻せる」可能性を持った遺伝子が見つかる!

幹細胞が脱毛に影響を与える可能性のある新しいメカニズムが発見された
Credit:depositphotos

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多くの男性が加齢に伴って、薄毛や脱毛を経験しています。

これは毛包と呼ばれる毛を作り出す器官内で、細胞を分化させている幹細胞が失われることで発生しているとわかっています。

しかし、なぜ毛包幹細胞が老化によって失われてしまうのか、そのメカニズムは未だによくわかっていないのです。

米国ノースウェスタン大学(Northwestern University)の研究チームは、初めて生きた生物の幹細胞が老化とともにどうなるかを追跡監視し、幹細胞が本来あるべき位置から移動してしまい、移動先に環境に慣れずに死んでしまうことを発見しました。

これは幹細胞を固定する接着剤が失われるためで、チームはこの接着剤を作り出す遺伝子も特定しています。

この遺伝子をもとに戻すことができれば、脱毛現象を逆転させられるかもしれません。

研究の詳細は、10月4日付で科学雑誌『Nature Aging』に掲載されています。

目次 毛根が死ぬ理由細胞の接着剤がなくなっていた 毛根が死ぬ理由 私たちの毛は常に死と再生を繰り返しています。 これは毛包と呼ばれる皮膚内の器官(一…

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参考文献

Stem cells lose their ‘glue’ and escape from hair follicle to cause hair loss
https://news.northwestern.edu/stories/2021/10/of-balding-mice-and-men-and-women/
Maintaining stem cell stickiness could be the key to battling baldness
https://newatlas.com/medical/stickiness-stem-cells-hair-loss-baldness-treatment/

元論文

Escape of hair follicle stem cells causes stem cell exhaustion during aging
https://www.nature.com/articles/s43587-021-00103-w?proof=tr

「光の速度が低下する」ありえない世界を表現したゲームが開発される

光速度の低下した世界を再現するゲーム「A Slower Speed of Light」のゲーム画面。光のドップラー効果が実際に色彩に影響している。
Credit:MIT Game Lab © 2021 Massachusetts Institute of Technology

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私たちは、光を使って世界を見ています。

そのため、人間が光の速度に近づいて動いた場合、世界の見え方にはいろいろと奇妙なことが起こります。

光のドップラー効果で色彩が変化したり、空間や時間が歪んで見えるようになるのです。

ただ光は宇宙でもっとも速い存在のため、人間がそれを知覚できる状況は普通ありえません。

そこで、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の研究チームは、こうした物理学者の思考実験の世界を実際体験するために、光の速度が低下する世界を表現したゲームを開発しました。

光の速度が低下していったとき、世界は一体どのように見えるのでしょうか?

目次 人間が光速に近づくと何が起きるのか?光の速度を遅くする 人間が光速に近づくと何が起きるのか? 光は真空中を毎秒約30万キロメートルで移動します…

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参考文献

A Slower Speed of Light
http://gamelab.mit.edu/games/a-slower-speed-of-light/
What would happen if the speed of light was much lower?
https://www.livescience.com/what-if-speed-of-light-slowed-down

「鍼治療のツボの正体」を解剖学的に示すニューロンが発見される

鍼治療の治療メカニズムは科学的にはまったく根拠がわかっていない
Credit:canva

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鍼治療とは、炎症に関連した慢性的な痛みや、その他健康上のさまざまな問題を改善させる数千年も続く中国の伝統医療技術です。

現在はどこ国にも鍼治療の診療所があり、非常に一般的な医療として浸透しているイメージもあります。

しかし、この治療法には科学的根拠がまるでなく、その治療メカニズムもよくわかっていません

ハーバード大学医学部の神経科学の研究チームは、そんな鍼治療において、電気鍼を使った場合に抗炎症反応を引き起こす神経ニューロンを発見したと報告しています。

果たしてこの発見は、謎多き鍼治療のメカニズムを解明する神経解剖学的な根拠となりうるのでしょうか?

この研究の詳細は、10月13日付で科学雑誌『Nature』に掲載されています。

目次 科学的根拠がない? 鍼治療の謎鍼の効能は科学的に説明できるのか?疑惑の多い鍼治療研究 科学的根拠がない? 鍼治療の謎 伝説によると、鍼治療の始…

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参考文献

Exploring the Science of Acupuncture
https://hms.harvard.edu/news/exploring-science-acupuncture
代替医療解剖 (新潮文庫)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01N2WEPWB/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=nazology-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B01N2WEPWB&linkId=f554d0af8b17fe56d869e606346f5719

元論文

A neuroanatomical basis for electroacupuncture to drive the vagal–adrenal axis
https://www.nature.com/articles/s41586-021-04001-4

現代人は「Google検索を自分の知識と勘違い」して自分が賢いと誤解していた

多くの人はGoogle検索で得た知識をもともと自分の知識だったと勘違いしている
Credit:canva

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現代の人々は、「Google」を代表とする検索エンジンによって、常にオンライン情報とつながっています。

何かを知りたいと思ったときに、ネット検索を利用するのは、もはや当たり前のことでしょう。

しかし、テキサス大学オースティン校(UT Austin)の新しい研究は、そのために多くの人々は内部知識と外部知識の境界が曖昧になっていると報告しています。

現代の人々は、自分が実際に見つけ体験し、頭で考えたことと、ネット検索で得た知識の見分けがつかなくなっており、インターネットなしで自分がどれだけ知識を持っているかについて、正しい評価ができなくなっているというのです。

この研究の詳細は、10月26日付で学術誌『米国科学アカデミー紀要 (PNAS)』に掲載されています。

目次 「無知の知」を忘れた現代人自分の知性の誤認 「無知の知」を忘れた現代人 かつて古代ギリシアの哲学者ソクラテスは「無知の知」という考え方の重要性…

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参考文献

We’re Not as Smart as Google Makes Us Think We Are
https://medium.com/texas-mccombs/were-not-as-smart-as-google-makes-us-think-we-are-57ebeebbf135
Do you think with Google? People who use the search engine to find answers think they’re smarter because they mistake the internet’s knowledge for their own memory
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-10145245/People-Google-think-theyre-smarter-really-study-shows.html?ns_mchannel=rss&ns_campaign=1490&ito=1490

元論文

People mistake the internet’s knowledge for their own
https://www.pnas.org/content/118/43/e2105061118

疑似的な脳と脊髄を持つ「4つ足ロボット」をMITが開発

隙間を飛び越えるロボットを開発した研究チーム
Credits:MIT News,One giant leap for the mini cheetah(2021)/Photo courtesy of the researchers

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非常に俊敏な動作を行う4つ足のロボットは、最近動画などでよく見かけるようになりました。

しかし、こうしたロボットの動作が向上してくると、地形のわずかな隙間を飛び越えることが難しくなってきます

マサチューセッツ工科大学(MIT)などの研究チームは、この問題をロボット前方に搭載したカメラによる視覚情報のみを使って解決させる、新しい制御システムを開発しました。

隙間のクリアには視覚情報が重要となりますが、俊敏なロボットに視覚制御はあまり適していません。

視覚を使ってパワフルなロボットを制御する今回のシステムは、4つ足ロボットの対応地形をさらに広げる可能性があります。

研究の詳細は、、来月開催される「Conference on Robot Learning」で発表される予定です。

目次 制御が難しくなった4つ足ロボット視覚情報をリアルタイムに処理して動きを制御する 制御が難しくなった4つ足ロボット 野生のチーターは起伏のある複…

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参考文献

One giant leap for the mini cheetah
https://news.mit.edu/2021/one-giant-leap-mini-cheetah-1020

元論文

Learning to Jump from Pixels
https://openreview.net/forum?id=R4E8wTUtxdl