池の水ぜんぶ抜いたら「完全な状態の巨大な魚竜の化石」が出てきた(英国)

英国ラトランドウォーター自然保護区で発見された魚竜の化石。全長は10m以上ある。
Credit:Rutland Water Nature Reserve,Britain’s largest ‘Sea Dragon’ discovered in UK’s smallest county(2022)

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池の水をぜんぶ抜く、というテレビ企画が日本では人気を博しましたが、英国では自然保護区の整備で貯水池の水を抜いたところ、飛んでもないものが発見されました。

それは魚竜の完全な状態の骨格で、英国で発見された同種の化石としては最大のものだったといいます。

ジュラ紀の海洋において、捕食者の頂点にいたとされるこの魚竜の化石は、10mもの大きさがあり、人が横に寝転んで並ぶとそのスケールの凄さがよくわかります。

目次 貯水池の水を抜いたら現れた巨大魚竜の化石ジュラ紀の海洋の覇者 貯水池の水を抜いたら現れた巨大魚竜の化石 2021年2月に、英国のラトランド・ウ…

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参考文献

Britain’s largest ‘Sea Dragon’ discovered in UK’s smallest county
https://www.lrwt.org.uk/seadragon
Ichthyosaur: Huge fossilised ‘sea dragon’ found in Rutland reservoir
https://www.bbc.com/news/science-environment-59915689

鮭が持つ磁気センサーはどこからやって来たのか?

鮭
Credit:Oregon State University (2022)

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鮭や渡り鳥、蝶などの動物は磁気感覚というものを持っており、地球の磁場を利用して餌場や繁殖地へ正確に移動できることが知られています。

しかし、この磁気感覚はどのようにして獲得された機能なのでしょうか?

今回、米国オレゴン州立大学を筆頭とした国際研究チームは、鮭やその他の動物の特殊な受容体細胞内に形成されるマグネタイト結晶が、バクテリアによって開発された古代の遺伝子システムに根ざしており、大昔に動物に取り込まれた可能性があると明らかにしました。

この説は、鮭の鼻の細胞内から見つかったナノスケールの磁性体から得られた証拠に基づいています。

研究の詳細は、1月18日付で科学雑誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されています。

目次 動物の磁気感覚はどこから来たのか? 動物の磁気感覚はどこから来たのか? 一部の動物は地球の磁気を敏感に感じ取り、自分の目指す場所へのナビゲーシ…

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参考文献

New research on magnetite in salmon noses illuminates understanding of sensory mechanisms enabling magnetic perception across life
https://today.oregonstate.edu/news/new-research-magnetite-salmon-noses-illuminates-understanding-sensory-mechanisms-enabling

元論文

Conservation of magnetite biomineralization genes in all domains of life and implications for magnetic sensing
https://www.pnas.org/content/119/3/e2108655119

天の川銀河と最後に衝突した「ソーセージ銀河」を調査

地上から観測した天の川銀河の全貌
Credit:ESO/B. Tafreshi (twanight.org)

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私たちの属する天の川銀河は、宇宙の中でも比較的大きい銀河の1つです。

そのような大きな銀河は、他の銀河との衝突・合併を繰り返すことで形成されていったと考えられています。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)の新しい研究は、約130億年前に天の川銀河と衝突したとされる「ガイア・ソーセージ・エンケラドゥス(Gaia-Sausage-Enceladus)」が、どのように天の川銀河に取り込まれていったかを調査

それにより、過去100億年にわたる天の川銀河のほぼ全体の成長を説明できるモデルに近づいたと報告しています。

研究の詳細は、2021年12月14日付で科学雑誌『The Astrophysical Journal』に掲載されています。

目次 天の川銀河に取り込まれた最後の銀河 天の川銀河に取り込まれた最後の銀河 私たちの属する天の川銀河も、始めから現在のような姿だったわけではありま…

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参考文献

Our Milky Way Galaxy’s Most Recent Major Collision
https://scitechdaily.com/our-milky-way-galaxys-most-recent-major-collision/

元論文

Reconstructing the Last Major Merger of the Milky Way with the H3 Survey
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ac2d2d

5700万光年先に「ニヤニヤ笑い」のような銀河を発見

雪だるまのように笑っている銀河が見つかった
Credit:canva

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NASAが2021年の終わりに、ハッブル宇宙望遠鏡でとある銀河の姿を捉えました。

その美しい銀河の画像は、周囲に輝く天体と合わせてみると、なんだかまるでにやにや笑っているように見えます。

今回は、この銀河について解説しましょう。

目次 にやにや笑って見える銀河 にやにや笑って見える銀河 2014年、ニュージーランドのアマチュア天文学者が、ケンタウルス座の方角から発せられた明る…

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参考文献

Hubble Views a Galaxy With an Explosive Past
https://www.nasa.gov/image-feature/goddard/2021/hubble-views-a-galaxy-with-an-explosive-past
Feast Your Eyes on The Last Hubble Pic For 2021 – A Distant, Smirking Galaxy
https://www.sciencealert.com/hubble-dazzles-us-with-another-stunning-galaxy-the-site-of-an-epic-supernova

長く「幸せな夫婦」でいるための条件を調査した研究

長く幸福なカップルで居続けるためには何が必要なのか?
Credit:depositphotos

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結婚したカップルは、この人こそ「運命の相手」と信じていたはずです。

しかし、共に老いて生涯を添い遂げる幸福なカップルはあまり多くありません。

その理由の1つは、誰かと多くの時間を過ごせば意見が対立する状況を避けることはできないからでしょう。

ここをうまく乗り越える秘訣は何なのでしょう?

今回は、末永く続く「幸せなカップル」に何が重要かを調査した、一風変わった研究を紹介します。

研究の詳細は、2019年8月21日付で、科学雑誌『Family Process』に掲載されています。

 

目次 長く一緒にいるために大切なこと 長く一緒にいるために大切なこと 公園で仲の良さそうな老夫婦を見ていると、長く良好な夫婦の関係を維持する秘訣はな…

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参考文献

Research shows how happy couples argue — and why this matters a lot
https://www.zmescience.com/science/domestic-science/research-shows-how-happy-couples-argue-and-why-this-matters-a-lot/

元論文

What are the Marital Problems of Happy Couples? A Multimethod, Two-Sample Investigation
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/famp.12483?__cf_chl_jschl_tk__=eiAy5_gZwUPqEnZ6S0Rpo4uNAgRI26Erg5U6V0VDXlU-1641539558-0-gaNycGzNDuU

視覚が極端に発達した白亜紀の奇妙なカニの生態

絶滅したカリキマエラ・ペルプレクサ(Callichimaera perplexa)の再現画像
Credit:Kelsey M. Jenkins et al.,iScience(2022)

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2005年南米コロンビアのアンデス山脈で非常に奇妙な姿をしたカニの化石が発見されました。

それは約9500万年前白亜紀に生息していたと考えられる、非常に大きな目とオールのような脚を持った甲殻類で、2019年にイェール大学の研究チームにより新種として登録が行われました。

その生物は「Callichimaera perplexa(カリキマエラ・ペルプレクサ)」と名付けられています。

今回、米国イェール大学(Yale University)とハーバード大学(Harvard University)の古生物研究チームは、この奇妙な古代のカニの特徴の1つである大きな目を分析した新しい研究結果を報告しました。

それによると、カリキマエラの目は異常に高い光学特性を持っていたことがわかり、視覚に頼った捕食者だったと示されています。

研究の詳細は、科学誌『iScience』に2022年1月に掲載されています。

目次 奇妙なカニの化石極端に巨大な目の意味 奇妙なカニの化石 2019年に登録された新種の古生物「Callichimaera perplexa(カリ…

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参考文献

A crab’s-eye view of the ancient world
https://news.yale.edu/2022/01/05/crabs-eye-view-ancient-world

元論文

The remarkable visual system of a Cretaceous crab
https://doi.org/10.1016/j.isci.2021.103579

パンデミック中に生まれた赤ちゃんは母親の感染有無に関係なく神経発達が低下する

パンデミック中に生まれた赤ちゃんは運動技能の低下が見られる
Credit:canva

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コロナウイルスのパンデミックが妊婦に与えるストレスは、この期間中に生まれた赤ちゃんの成長にも影響を与える可能性があるようです。

米コロンビア大学(Columbia University)の新しい研究は、最初のコロナウイルスの波がニューヨーク市を襲った2020年の始め以降に生まれた乳児は、それ以前に生まれた乳児に比べて発達スクリーニングテストのスコアが低いと報告しています。

これは母親のCOVID-19感染の有無には関係なく、パンデミック中に生まれた赤ちゃんに広く見られる傾向だといいます。

研究の詳細は、2022年1月4日付で科学雑誌『 JAMA Pediatrics』に掲載されています。

 

目次 妊娠中にコロナ感染しても、子どもに影響はない?妊婦のストレスが子どもの発達に影響する 妊娠中にコロナ感染しても、子どもに影響はない? 今回の研…

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参考文献

Babies Born During COVID-19 Pandemic Score Lower on a Developmental Screening Test
https://scitechdaily.com/babies-born-during-covid-19-pandemic-score-lower-on-a-developmental-screening-test/

元論文

Association of Birth During the COVID-19 Pandemic With Neurodevelopmental Status at 6 Months in Infants With and Without In Utero Exposure to Maternal SARS-CoV-2 Infection
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2787479

太陽と月の重力が動植物の行動に影響を与えていると判明

月と太陽の重力は地球の動植物の行動に影響していた
Credit:depositphotos

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地球の生物はすべて、太陽・月による重力変動を受けながら進化してきました。

これは生物の活動リズムと関係する可能性があるということは、以前から指摘されていましたが、それはとても小さな力であるため科学的には軽視されがちでした。

今回、ブラジルのカンピーナス大学(UNICAMP)とイギリスのブリストル大学( University of Bristol)の二人の研究者は、重力潮汐力が生物の活動リズムを常に形成してきた知覚可能な力であることを、新たな研究から示しました。

この研究では、広範な文献のメタ分析を通じて、サンゴの繁殖力や、ひまわりの苗の成長、等脚類の遊泳パターンが太陽・月の重力と関連することを明らかにしています。

研究の詳細は、科学雑誌Journal of Experimental Botany』に11月2日付で掲載されています。

目次 月と太陽が地球に与える影響生命が示すリズム 月と太陽が地球に与える影響 今回の研究の話題に入る前に、まず太陽と月が地球に与えている重力の影響に…

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参考文献

Gravitational action of sun and moon influences behavior of animals and plants, study shows
https://phys.org/news/2022-01-gravitational-action-sun-moon-behavior.html

元論文

Are cyclic plant and animal behaviours driven by gravimetric mechanical forces?
https://academic.oup.com/jxb/advance-article/doi/10.1093/jxb/erab462/6417250

満月の16倍の大きさで夜空に広がるブラックホールジェットの噴火

1200万光年離れたケンタウルス座にあるブラックホールのジェット
Credit:Ben McKinley, ICRAR/Curtin and Connor Matherne, Louisiana State University

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地球から約1200万光年離れた楕円銀河「ケンタウルス座A(Centaurus A)」の中心には、太陽の5500万倍という巨大な質量を持つブラックホールが存在しています。

これは地球にもっとも近い活発な活動を続ける超大質量ブラックホールです。

西オーストラリア州の奥地に設置されたマーチソン広視野アレイ(MWA)望遠鏡は、そんな巨大なブラックホールのジェットの全貌を撮影することに成功しました。

このブラックホールの噴火とも呼ぶべき炎は、地球の夜空で満月16個分に相当する範囲に広がっています。

研究の詳細は、2021年12月22日付で科学雑誌『Nature Astronomy』に掲載されています。

目次 地球からもっとも近い活発なブラックホールの噴火 地球からもっとも近い活発なブラックホールの噴火 ブラックホールと一言でいっても、そのサイズや活…

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参考文献

ASTRONOMERS CAPTURE BLACK HOLE ERUPTION SPANNING 16 TIMES THE FULL MOON IN THE SKY
https://www.icrar.org/centaurus/

元論文

Multi-scale feedback and feeding in the closest radio galaxy Centaurus A
https://www.nature.com/articles/s41550-021-01553-3

歴史で学ぶ量子力学【改訂版・4(最終章)】「量子力学を理解しているものは、一人もいないと言ってよい」

物理学のさまざまな方程式
Credit:depositphotos

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ニュートン以来、長きに渡って物理学が描いてきたのは、因果律に支配された決定論的な宇宙でした。

「現在が正確にわかっていれば、未来を予測できる」という、いわゆるラプラスの悪魔は、こうした古典物理学の常識を究極的に突き詰めていった場合に導かれる結論です。

しかしそれでは、波と粒子という異なる性質を同時に持った光や電子の振る舞いを説明することができません。

そこでボーアはこれまでの物理学の常識を覆し「物事の状態は観測によってはじめて決定される」、つまり「観測するまで物事の状態は決まっていない」というコペンハーゲン解釈を発表するのです。

「未来は決まっていない。あるのは可能性だけだ」というのは、少年漫画のオチみたいで素敵ですが、決定論と因果律を尊ぶ物理学者たちには受け入れがたいものでした。

特にアインシュタインは確率などに頼らず、明確に電子の状態を決定できる隠されたパラメータが存在するはずだと考えました。

例えばAとBの2つの箱があり、片方にだけボールが入っているとします。このときAの箱の中は、蓋を開けようと開けまいと、ボールが「ある」か「ない」かの2つに1つです。

それに対して明言を避けて「Aの中にボールがある確率は50%だ」と言われたら、単にわかんないから確率で誤魔化してるだけじゃないかと言いたくなりますよね。

アインシュタインが指摘したいのはそういうことでした。

彼にとって確率に頼るというのは、わからないから白旗をあげていることに等しかったのです。

そのためアインシュタインは、量子力学が不完全な理論であることを証明しようと、次から次へ思考実験を考案してボーアに戦いを挑みました

現在私たちがよく知る量子力学の解説の多くは、実はアインシュタインたちが量子力学を否定するために生みだした思考実験が元ネタです。

ここからは、馴染みのある量子力学の話しが数多く登場します。

目次 アインシュタインは量子力学の何が気に入らなかったのか?コペンハーゲン解釈を否定するために生まれた「シュレーディンガーの猫」哲学の決着 ベルの定…

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参考文献

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突 (新潮文庫)
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4102200819/nazology-22/ref=nosim/